小さなヒットを大きなヒットにもっていく
小野:プラットフォームの変化が激しい中で、いかにパズドラのようなビッグタイトルを生むかは、難しいテーマだと思います。その点について、組織構造などに関して、今後どのように考えていますか。
辻本:それが分かったら、もっと大儲けしていると思いますけど……。僕は経営サイドなので、開発もやったことありません。やったことがあるのは、ゲームの販売ぐらいです。
過去の経緯から考えても、プレイステーションが売れるとか、セガサターンが売れるとか、それは「神のみぞ知る」です。最近の例でいうと、「モンスターハンター」は最初PSPで出しました。当時は、携帯機ではニンテンドーDSのほうが売れていたのに、なぜPSPかというと、開発環境上、PSPしか出せなかったんです。
ただ結果としては、PSPから出して正解だったわけです。僕の、カプコンの信念は、まずは面白いものを作ってくださいということ。面白いものを作る上において、あなたたちの考える企画が一番適合しているハードはどれですか?地域はどれですか?それで、提案してくださいね、と社員には言っています。
そこから市場分析ですね。ハードはどれくらい売れています、市場性はどうであると。それに対してかかるコストから考えるときに、成功の可能性はどうであるかという話をします。僕はモノを作らないので、作る人たちを信頼して、どうすれば創造性をかき立てられるかを考えます。もちろん、ルールはありますよ。コストに対する利益はこれぐらい、この期限までには作らないと会社としても事業計画が成り立たない、といったことは決めます。
もう1点は、ヒットが出たらそのタイトルをまたヒットさせるために、ユーザーに継続して楽しんでもらうようなことをいかに考えていくか。ユーザーの母数を上げていくことによって、小さなヒットから大きなヒットに持っていくのが重要だと思っています。
社内でもめたタイトルほど売れる
里見:なかなか大ヒットは出ないんですけれども……。今、セガネットワークスに関しては、プロトタイプ(試作)が上がってきた段階で、全プロジェクトのゴーサインなりキャンセルを決めるというシステムをとっています。
一番もめるのは、チャレンジタイトルと社内で言っていますが、まだ出ていないジャンルのタイトルです。社内で僕が言うのは、大ヒットを狙うよりも、中ヒットの積み重ねをしていこうということです。中ヒットの積み重ねの中から、大ヒットが出てくればいいかなと。そのほうが経営も安定します。大ヒットが出たあとに、それが終焉してしまったら、次のヒットがないと大変なことになってしまうかもしれません。
ただ逆に、僕の判断で、現場がこんなの合理的に考えて儲かりませんというチャレンジタイトルを、こいつの情熱にかけようということでゴーサインを出すこともあります。
よく社内で言いますが、セガはもめたタイトルほど当たっているんですね。「ムシキング」も、社内の会議で3回ぐらい落ちていますし、「龍が如く」も何回もやめようという話がありました。ちょうど、石原都知事が新宿浄化作戦をやっている最中だったので、こんなヤクザゲームを出せないということで。もめたタイトルほど売れているので、合理的に考えられないタイトルというものにもチャンスはあるかなとは思います。