小野:小林さんお願いします。
小林:DeNA全体というよりは、私が見ているゲームの1部門、その自分のチームの思想に近いかもしれませんが、かねがね日本人は卑屈だなと思っています。おそらくサンフランシスコにいらっしゃった経験がある里見さんや青柳さんはもっと感じられていると思いますが、アメリカ人の場合、フェイスブックやツイッターがバーンと人気が上がったときに、「これは絶対世界中で流行る、すぐ世界に持っていこう」となるんですよね。別にどこの国に合わせようとか言う前に。いいものは絶対、誰でも使うんだよという感覚を強く持っています。
それに対して日本人は、「日本で当たりました、でも島国だから、日本人だけが好きなんじゃないかな」みたいに割とビビるんですよ。最終的に自分なりにいじろうとするんですが、だいたい、海外の変な寿司屋みたいになります。それよりは、本当にいいと思うものをまず普通に出したらいい。日本人が海外のことを勝手に慮って、うまくカスタマイズできた事例はそんなに思いつきません。
日本で超ヒットしたものを、バーンとそのまま持っていく、そして世界でも当たりましたというほうがまだ思いつくんです。マリオもそうだと思いますし、日本のアニメでもそうした例はいっぱいあるはずです。そういうチャレンジは、もう1回、自分たちで仕掛けてみたいとずっと思っています。
最終的に運用していくにあたっては、各国ごとのローカライズは必要だと思いますが、最初のタネの創出に関しては、ユニバーサルに世界中で当たるものを創造するのはたぶん誰もできないです。世界人ではないので。それよりも、とにかくお前が一番面白いと思うものを作れと。ピンと来るなというのができたら、じゃあ世界に行こうかというような形で、まずは自分が一番これはイケると思うものを信じて、作れるところまで作ることを大切にしてやっています。
クリエイティブの解放とディシプリンの両立
青柳:どうやってヒットタイトルを作っていくかについて、特にアメリカでの経験を踏まえて重視しているのは、「クリエイティビティをどう解放させるか」と「そこに経営サイドとしてどうディシプリンを入れるか」です。
開発に着手してから、トップダウンでこうやる、マーケットでこういうのが流行っているからこうだみたいな、マーケットインアプローチはなるべくやめて、そうした要素をちゃんと見させた上で考えさせて、彼らがグリーのものだと胸を張って出せるものを作らせようというのが基本です。
ただ、それだけだとPL(損益)がおかしくなってしまいます。どうやってプロジェクトを途中でやめるかについて、グリーはあまり上手くなかったんです。グリープラットフォーム上で出せば、ユーザーは集まるし、出した後にユーザーさんの声を聞きながら変えていけばどうにかなりましたが、グリープラットフォームが機能しない世界においてはダメだと理解して、開発管理や経営判断のやり方を変えました。この1年ぐらいで、途中までつくったタイトルをきちんとやめられるようになったと思っています。
最近も、「クリエイティビティの解放」と「ディシプリンの両立」という意味で、社内で始めたのが、2週間だけ好きなことをさせる仕組みです。「2週間好きなことをやっていい。2週間後に、動くものを見せていいと思ったら、追加でさらに2週間与えられる。でも、2週間でダメだったら、他のプロジェクトにアサインされる」という仕組みを導入しているんですが、結構いいなと思っています。
最後に評価するのは、私と荒木英士という責任者です。これはゲームなので、申し訳ないけど多数決ではなくて主観ですよと言っています。こういうふうに、今までよりもディシプリンを入れたところが、僕らがここ数年から学んだことかな、と思います。
同時に、もう1つ力を入れているのが、今流行っているものを追うのではなくて、半年後、1年後にヒットしそうなものを信念で作ることです。今これが流行っているから、これとこれを組み合わせてこれで出すといったものは、本当の意味で勝てないからやめよう、と言っています。
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