「声を上げる女性が増えている」小さくない影響 フェミニズムの1年を振り返る

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今年は女性が編集するフェミニズム雑誌が出た、という意味でも注目の年だ。現代書館からも『シモーヌ』が創刊されており、特集テーマは、シモーヌ・ド・ボーヴォワールである。

物語は、いつの間にか人の心に入り込み、意識を変える力を持つことがある。女性自身による女性目線の人生や社会が、やがて読んだ人たちの生き方を変え、社会を変える原動力になるかもしれない。何しろ、長い間メディアから発信してきたのは、男性が中心だった。男性目線の世界観に、女性を含めて皆、染まりすぎていたかもしれない。女性が自分たちの発想で考えを発表することは、世界観を変えていく力になるだろう。

早くから女性の視点を世に問うてきた、フェミニストのパイオニアたちも今年、注目された。

子供のとき見ていた田嶋陽子

『エトセトラ』が特集した田嶋陽子氏といえば、『ビートたけしのTVタックル』。自己主張の強い男性たちに交じって、1人正論を吐いて叩かれていたフェミニストの英文学者の姿を記憶している人も多いだろう。

1980年代生まれの柚木氏と山内氏にとっては、子供の頃からテレビで観ていたフェミニストの代表的存在。同誌にコメントを寄せた女性たちも、2人と同じミレニアル世代が中心で、田嶋氏の言葉が知らない間に体に沁み込んでいたという発言が目立つ。

今のフェミニズム・ムーブメントは、まさにこの世代の女性が直面する問題について声を上げ盛り上げてきた側面がある。専業主婦を前提とする昭和フォーマットの家事を効率化しよう、と主張する家事論争もその1つだ。覚醒を促したという意味で、実は1980~1990年代の田嶋氏の全国放送レギュラー出演は大きかったのかもしれない。

もう1人有名なフェミニストが、上野千鶴子氏である。彼女が今年、東大の入学式で講演した内容は大きく報道され、幅広い世代の女性たちを力づけた。その内容とはいかに女性たちが男性と違って社会で期待されないか、差別される社会が待っているかという現実を伝えるもので、「あなたたちのがんばりを、自分が勝ち抜くためだけに使わないでください」「フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です」とエールを送る。

1970年代にウーマン・リブ運動を先導した、田中美津氏にも注目が集まっている。彼女を主人公にしたドキュメンタリー映画『この星は、私の星じゃない』が公開されて話題を呼び、インタビューや講演などを収録した『この星は、私の星じゃない』『明日は生きてないかもしれない…という自由』の出版が続く。

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