「声を上げる女性が増えている」小さくない影響 フェミニズムの1年を振り返る
昭和の時代は、主婦が平日にお互いの家庭を訪問し合い、手土産の洋菓子を持っていく、子供の誕生日などに大勢が集まりパーティーを開いて大きなホールケーキを分け合うといった客が大勢いて洋菓子店は成り立っていた。そういう生活シーンは今でもあるが、共働き家庭が主流でシングルも増えた少子化の現代には、成立現場が限られている。
旧態依然のライフスタイルを前提にした社会の現実を明らかにし、変えようと盛り上がっているのが、ここ数年のフェミニズム・ムーブメントだ。今年もいろいろな形で続いてきた。
日本の文学もジェンダーテーマ多く
目立った動きの1つは、文学の世界であった。
年明けの出来事は、韓国文学の『82年生まれ、キム・ジヨン』のヒットである。ソウルで暮らす普通の女性が、生まれ育って就職し、結婚して母親になる過程で、いちいち理不尽な差別に遭うさまをリアルに描いた小説は、韓国でミリオンセラーになって日本に上陸し、翻訳文学では異例の15万6000部の大ヒットとなった。
韓国にはフェミニズム文学というジャンルがあり、それらの作品も近年次々と翻訳され、日本で人気となっている。その様子を捉え作品を紹介した『文藝』秋号「韓国・フェミニズム・日本」は、86年ぶりの増刷で1万4000部となり単行本化された。
日本の文学も負けていない。今年の文学賞の受賞作には、社会的に規定される男女の役割、「ジェンダー」をテーマにした作品が目立つ。
『文藝』版元の河出書房新社が主催する今年の文芸賞は、宇佐美りん氏の『かか』と、遠野遥氏の『改良』である。前者は、父と離婚した後に荒れる母親と暮らす女性の悔しさを、後者は、女装などで美しい外見を目指す青年の、葛藤と性をめぐる暴力を描いている。
ノンフィクション賞の受賞作も、ジェンダーがテーマだ。大宅壮一ノンフィクション賞と新潮ドキュメント賞に選ばれた河合香織氏の『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』は、出生前診断で「異常なし」とされたがダウン症で生まれた子供をめぐる裁判を描く。開高健賞を受賞したのは、濱野ちひろ氏の『聖なるズー』で、動物をパートナーとして愛し、セックスをする場合もある動物性愛者に焦点を当てた。
今年夏に発表された第161回直木賞は、候補者6人全員が女性だったことがニュースになった。受賞したのは、大島真寿美氏の『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』。芥川賞受賞作も女性作家のもので、今村夏子氏の『むらさきのスカートの女』である。直木賞にノミネートされた1人、柚木麻子氏は今年、親交のある山内マリコ氏と共同編集でエトセトラブックスから創刊された『エトセトラ』で、田嶋陽子氏の特集を組んでいる。
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