線路と道路両用「DMV」、ようやく四国で実用化 四国の阿佐海岸鉄道で2020年度から運行へ

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井原氏は2019年4月に参与として着任、6月の取締役会で正式に専務となった。取材は10月末。着任以来、約半年の感想を聞いた。

「着任当時、あれもやろう、これもやりたい、といろいろ考えていました。いまは、その中で、すぐできそうなこと、課題がありそうなことの仕分けができてきたな、という感じです」

2020年度の導入時期についてはどうか。

3台展示イベント時の様子。モードチェンジ時は地元高校生らの和太鼓演奏を流して盛り上げる(筆者撮影)

「当初は関係者一同、東京オリンピック・パラリンピックまでに、という目標でした。個人的には、もっと遅くなりそうだな、と感じています。DMVの導入にあたり、JR牟岐線の阿波海南―海部を当社に移転して、阿波海南にモードチェンジ施設を作ります。これもJR四国さんと内々に合意しています。あとは手続きに時間がかかるという状況です」

「ゴーサインが出たところで、DMV関連施設の工事が始まります。現在は甲浦駅でモードチェンジ施設と車両が高架と地上を行き来するスロープを工事中です。阿波海南側の工事はこれから。牟岐線の阿波海南~海部間も含めて、当社も運休して、中間駅の改良と保安設備の設置工事をします」

運休時の代行バス運転などについては未定だ。もしかしたら、DMVは代行バスとして先にデビューするかもしれない。

道路区間のルートはこれから

なお、阿佐海岸鉄道は運転士が6人いて、2台のディーゼルカーと運転指令業務のシフト勤務態勢となっている。納車されたDMVをすぐに活用したくても運転士が足りない。

井原氏の運転で道路区間を試乗した(特別な許可を得て筆者撮影)

そこで井原専務は中型自動車第一種免許を取得した。第二種免許が必要な旅客営業運転はできないけれど、道路の回送は可能。イベントに出展する場合には、自らハンドルを握る。筆者も取材時に井原氏の運転するDMVに試乗した。

「鉄道車輪を搭載しているからでしょうか、DMVは教習で乗った車両よりも重く、ハンドルもブレーキも気を使います。いやあ、実は、人を乗せて走るのは今日が初めて……」

井原氏が安全運転で安心した。DMV道路区間の乗り心地はバスと変わらず、車両が重いせいか、むしろ揺れが少なく安定しているような気がした。しかし、マイクロバスだけに窮屈で、これで室戸岬まで行くのは厳しい。道路区間のルート選定は年内に発表される予定だ。

杉山 淳一 フリーライター

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すぎやま じゅんいち / Junichi Sugiyama

東京都生まれ。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社でパソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当したのち、1996年にフリーライターとなる。IT、PCゲーム、Eスポーツ、フリーウェア、ゲームアプリなどの分野を渡り歩き、現在は鉄道分野を主に執筆。鉄道趣味歴40年超。全国の鉄道路線完乗を目指してコツコツと旅を重ねている。鉄旅オブザイヤー選考委員。基本的に、列車に乗ってぼーっとしているオッサンでございます。

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