線路と道路両用「DMV」、ようやく四国で実用化 四国の阿佐海岸鉄道で2020年度から運行へ
井原氏は地元の海陽町出身で、故郷の両親を安心させたいという気持ちもあった。とくに鉄道ファンというわけではない。生活は主にクルマ。出張などで新幹線に乗る程度。
井原氏自身が「鉄道を使わない人」だからこそ、どうしたら鉄道を利用するか、クルマユーザーの視点に立って考えられるともいえそうだ。新規顧客を作るという部分が店舗経営にも通じる。
「鉄道だけではなく、この街を訪れる客の滞在時間を増やし、単価を上げるという視点でDMVを活用したい」
単刀直入に聞く。約20名の定員は、輸送力として不足ではないか。しかし、その回答に絶句した。
「当社はそもそも混雑時間帯がありません。通学定期券発行数はゼロです」
1日の利用者は150人程度
報道によると、定期券の利用者は年間で2人。2018年度の輸送人員は定期、定期外を合わせて5万3570人。1日あたり約146.7人。1日の列車運行本数は37本だから1列車あたり平均利用者は約3.9人になる。
「だいたいその認識どおりです」
座席が埋まる時もあれば、乗客ゼロの時もある。と、いうことは、現在の100人以上の定員のディーゼルカーはオーバースペックだ。こうなると、阿佐海岸鉄道の存在意義も問われる。
阿佐海岸鉄道はもともと、国鉄阿佐線として室戸経由で徳島と高知を結ぶ目的で着工された。しかし国鉄の累積赤字問題によって工事が凍結。ほぼ完成した施設を自治体が第三セクターを設立して引き継いだ。そのうち徳島県と高知県の県境をまたぐ部分が阿佐海岸鉄道阿佐東線だ。営業距離は8.5km。ちなみに高知側は土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線となった。
なぜ阿佐海岸鉄道が設立されたか。その理由はDMV導入の理由にも現れている。2017(平成29)年2月に開催された「第2回阿佐東線DMV導入協議会」において、DMV導入の目的は「1.観光活用による沿線地域活性化」「2.阿佐海岸鉄道の経営改善と地域公共交通の拡充」「3.南海トラフ地震などの災害時の交通インフラ」を挙げた。
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