線路と道路両用「DMV」、ようやく四国で実用化 四国の阿佐海岸鉄道で2020年度から運行へ
観光活用第一としながら、実は「南海トラフ地震などの災害時の交通インフラ」の役割も大きい。
これは現地で理解できた。徳島から高知まで、室戸経由で国道55号がある。もうひとつ、山側に道路の計画が進行しているけれども、いまのところ55号が唯一の幹線道路だ。しかも海沿いを通っている。もし、地震、津波でこの道路が破壊されると地域が孤立する。
そこで、山側をトンネルと高架で通る阿佐海岸鉄道はバックアップルートとして頼りになる。これが、建設中断となった路線を引き継ぎ、阿佐海岸鉄道を設立した理由だろう。道路も線路も走るDMVの走破性も重要だ。公共事業の理由付けとして、安全や防災をとってつけたような案件もみられるけれど、阿佐海岸鉄道の場合は本気だといえる。
事業費は13億円
そして、阿佐海岸鉄道を維持し続けた理由はもっとわかりやすい。路線が短いから赤字も少なかった。毎年の不足額は1億円前後。阿佐海岸鉄道の維持にあたり、徳島県、海陽町、高知県、東洋町は合計12億円超の基金を拠出し、赤字を補填してきた。2018年度の最終赤字は108万円だ。もっとも基金は底をつきかけており、対策が急務だった。
そこでDMVの採用と投資が行われた。営業費用のうち、2両の車両の法定点検費用は2000万円以上とかなり大きい。DMVにすればこの部分を減額できる。
DMVの導入にあたり、保安装置、駅の改良など初期費用もかさむけれども、これも距離の短さが幸いしている。DMV化による事業費用は総額で約13億円。このうち車両購入費用は3億6000万円。残りは10億円未満だ。
ちなみにJR東日本が東北復興支援のために企画した「SL銀河」は総額約20億円だった。13億円はけっして小さい金額ではない。しかし、観光拠点整備プロジェクトとしてはおトクではないか。DMVを観光目的としても、災害時のインフラとしても、投資した以上の効果を期待できると考えたようだ。
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