もはや日本が「消費増税」から逃げられない理由

「普通に働く」中流階級こそ社会保障が必要だ

国民皆が安心して暮らせるようになるための変革の1つとして、増税は外せない(写真:CORA/PIXTA)
「普通に働いても将来不安に怯える」人たちが多数を占める日本は、従来の「経済優先」「自己責任」社会の見直しが急務である。では、どのように社会を変えていくべきなのか。近著『今こそ税と社会保障の話をしよう!』の著者である井手英策氏が、日本の「新たな国家ビジョン」を提示するとともに、具体的な税と社会保障のあり方を論じる。

「自己責任社会」から「頼りあえる社会」へ

今の日本は「誰かが困っている」社会じゃない。「大勢の人が未来への不安におびえる社会」だ。そう、今こそ「新たな国家ビジョン」を論じる時なのだ。

『いまこそ税と社会保障の話をしよう!』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

「多数不安社会(先が見えず、未来を不安視する人たちが多数を占める社会)」では、「格差是正」ではなく、万人の暮らしをどのように「保障」するかが問われる。実際、世界価値観調査によると、「国民皆が安心して暮らせるよう国は責任をもつべき」という問いに対して8割近い回答者が賛成している。

僕は、教育、医療、介護、子育て、障害者福祉といった、生きていくうえで誰もが必要とする/必要とするだろうサービスを「ベーシックサービス」と呼んでいる。ベーシックサービスをすべての人たちに無償で提供する、これが僕からの提案だ。

僕たちは自分の力で生きていると考えがちだ。だが、生まれれば親の世話になり、歳をとれば多かれ少なかれ、家族や周りの人たちの支えを必要とする。独力で大学に行った人も、税が入っていたからこそ払える程度の学費で済んだのだし、道路だって、橋だって、誰かの払った税がなければできなかったはずだ。

お互いが「頼る自由」を認めながら、生きていく、暮らしていくための「必要(ニーズ)」を満たし合う社会。病気をしても、失業をしても、長生きしても、子どもをたくさんもうけても、さらには貧乏な家庭に生まれても、障がいをかかえても、すべての人たちが人間らしい生き方を追い求められる社会。それが僕の目指す「頼り合える社会」のイメージだ。

読者の中には、「失業しても暮らしの心配がなければ、誰も真面目に働かなくなる、人々の競争意欲が削がれてしまう」といぶかしく思う人がいるかもしれない。反対に聞きたい。自己責任を押しつければ、人間が競争し、かつてのような経済成長を実現できるという根拠はどこにあるのだろう。

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