能町みね子「オカマだけどOL」からの大転換人生

行き着いたのは「恋愛関係のない」結婚生活

すでにインターネットで情報を得ることができる時代だった。プーケットにある日本人スタッフがいる病院を選んだ。

そこで、念願かなって性転換手術をしたのだが、手術後心臓の調子が悪くなるという思わぬ事態になってしまった。

「子供の頃の心臓の手術が原因かどうかはわからないんですけど、OLやってた頃から心臓の調子がおかしかったんです。病院にも通っていて、一応手術も大丈夫だろうとは言われていたんですが……」

徐脈という、脈が遅くなる症状が出ていた。体中に酸素を行き渡らせることができなくなり、めまいがしたり、ひどく疲れたりする病気だ。

手術後、心臓が如実に悪化してしまった。本来は2週間で退院の予定だったが、体調がまったく回復しなかったので3週間入院し続けた。

「手術が終わったら少しは観光したかったんですけど、結局病院の隣のスーパーくらいしか行けなかったですね。

体調悪いまま帰国したんですが、体が悪いと空港や飛行機の待遇が特別によくなるのにビックリしました。タイでも日本でもずっと車いすで、荷物も運んでくれました。

帰国後しばらく実家で休んでいたんですが、それでも体調は戻らず結局手術をして、心臓にペースメーカーを入れることになりました」

手術後は軽めの仕事で慣らしていくことに

能町さんはそもそもブログ本を出した後に、そのまま作家になろうとは思っていなかったという。

ブログ「オカマだけどOLやってます。」は本当に手術代を貯めるだけのものだったのだ。

「手術しちゃったら顔を出さずに消え去って、どっか別の会社でOLしよう、くらいに思ってました。でも体調が悪くてすぐには働けないので、まずは体に負担のかからない軽めの仕事をして慣らしていこうと思いました」

あるデザイン事務所から「週1日手伝ってもらえないか?」と頼まれたので引き受けた。

手術前から続けていたウェブのコラム連載も、続けていた。

「そうこうしてるうちに、執筆の仕事がぼちぼち入ってきたんですね。収入的にも食べていけるかな? というくらいになってきました。そこらへんで、デザイン事務所は辞めさせてもらいました。

雑誌『モーニング』(講談社)の巻末でコラムの連載をさせてもらいました。観光地でもなんでもない場所を散歩する連載だったのですが(例えば、取材の第1回は西高島平)、モーニングで連載できるならいけるかな? と自信を持ちました」

そして2007年の末に、流れるままにフリーランスになった。それ以降エッセイやイラストの仕事は途切れることなく来て、収入も知名度も上がっていった。

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