貸し渋り法案の光と影、金融行政を180度転換
亀井静香金融担当相の「モラトリアム」発言が衝撃を与えてから、1カ月余り--。20日、名称を「中小企業金融円滑化法案」として素案の骨子が発表された。
その内容は、おおむね関係者が受け入れ可能な範囲に着地した。信用保証協会などの第三者機関を入れることで、金融機関に無理なリスク負担を強いて金融システム不安を引き起こすことは避けた。
法案には、まず金融機関に中小企業者または住宅ローンの借り手から返済猶予含む貸し付け条件変更の申し込みがあった場合、自らのリスクでなるべく応じるよう努力義務規定を置く。それを促す仕組みとして、貸し付け条件の変更に向けた基本方針を策定させる。実施状況(件数、金額)を当局へ報告し、公に開示することも義務づけられた。
一方、金融庁は金融機関に対する検査マニュアル、監督指針を改定する。不良債権に該当しない範囲を広げることで、金融機関は貸倒引当金を積み増さずに済み、融資先からの条件変更の依頼にも応じやすくなる。
それでも金融機関が応じられないと判断した場合には、信用保証協会の保証を利用するか、企業再生支援機構、中小企業再生支援協議会などとの連携、事業再生ADRの活用などによって融資先の資金繰りへの対応を図る。
現在、信用保証協会は融資に際しては保証のみで、救済乗り換え等での利用は認められていない。これを使えるよう法律で手当てする。
ただし新保証制度を利用できるのは、保証協会や公的金融機関の利用がなく、民間金融機関からの借入金しかない比較的健全な中小企業に限る。一方、保証協会の保証割合を実質4割にとどめ、民間金融機関には金利を引き下げさせる。中小企業と金融機関双方のモラルハザード防止に配慮した。
また、2012年3月までの時限立法(条件変更の申し込みができる期間)とし、今後2回の年末・年度末の資金繰り対応にとどめる。そのため新制度による保証の利用額は「数千億円のイメージ」(経済産業省の近藤洋介政務官)にとどまる。国民負担に、一定の歯止めをかけた。