ナイツ塙「M-1優勝に大事なたった1つのこと」 「優勝するコンビ」「敗退するコンビ」の境界線
――複雑ですね。本を出しているけど、お客さんには読んでほしくないという気持ちもあると。
読んでほしくはない。この本は売れてほしいけど、読んでほしくはない。超わがままですよ。だけど、実はそんなに気にしていないです。僕は音楽も結構好きなんですけど、ミュージシャンもインタビューで曲の作り方とかの話をしたりするじゃないですか。それを聞いても、その人の音楽を聴きたくないとは思わないから。
――確かにそうですね。
むしろ、芸人なのにそこを変に隠して、家族の話とか趣味の話とかをしているやつのほうが、あんまり単独ライブとか見に行きたくないなと俺は思っちゃうから。だって、料理人がずっと料理に関係ない変な話ばっかりしていたら、料理がまずそうな気がしませんか?
――そうですね。
やっぱり料理人だったら料理にすごいこだわっていて、その話をしているほうが食べに行きたいと思うじゃないですか。まあ、いろいろな考えがあると思いますけど、本はもう出しちゃったからしょうがないです。
なぜ芸人は『M-1』を目指すのか?
――この本では基本的には漫才について書かれていますが、とくに『M-1』の話が多いですよね。やはり塙さんにとって『M-1』っていうのがそれだけ大きいものだったっていうことなんでしょうか?
僕らがコンビを組んだと同時に『M-1』ができたんですよね。だから、『M-1』とずっと一緒にやってきたっていう親近感があります。1回目から毎年出場していたから。
芸人ってみんないろいろ文句ばっかり言うんですよ。「俺たちは面白い」とか「環境が悪い」とか。だけど、『M-1』が始まったときに全員言い訳できなくなっちゃったんですよ。全員同じ条件で一気にやる大会だから。そんなの今までなかったんです。それまではみんな事務所内の予選で勝ち上がって、何かのオーディションに行くっていう世界だったんですよ。
だけど、『M-1』はもう全員が全員1000円払えば出られるというのがすごい気持ちよくて。そこからむちゃくちゃふるい落とされるじゃないですか。それが芸人にとって一番わかりやすかったんじゃないですかね。
――だから目標にしやすかったんですね。
そう、目標にしやすかったんだと思いますね。それまでは事務所のライブしか目標がなかったから、事務所のマネジャーにウケるネタとかって考えちゃうわけですけど、いま思えばそんなのちっちゃいことで。事務所なんか見なくても『M-1』の決勝にさえ行っちゃえば、事務所は絶対応援してくれるってなるから、目標がみんなこっちに変わったんですよ。それで漫才師が全員テンション上がったと思います。
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