日本人でも世界で勝つプレゼン力は身につく 東京五輪を呼び寄せたプレゼンのプロが語る
最たる例はタクシーだ。イギリスでは、タクシー運転手はすごく失礼で汚くて、余程のことがなければタクシーなんて使いたくない。鉄道のダイヤすらきちんとしたものがない。一方、日本のタクシー運転手はものすごく親切で知識も豊富だ。バスを見てもすごくきれいだし、電車も時間が正確だ。私はそういう点に非常に感銘を受けて注目したのだが、これは外から見たから気が付いたことだろう。
プレゼン力は誰でも身につけられる
――多くの人は「人を説得するようなプレゼン力やコミュニケーション力は生まれ持った能力で、鍛えられるものではない」と思っているかもしれません。
そんなことはまったくない。プレゼン力は鍛えれば誰でも身に付けられる。プレゼン力を学ぶのに年齢は関係ない。
マーガレット・サッチャー元英首相がいい例だろう。彼女が首相になった当初は、声がとてもかすれていたし、マナーもひどかった。だがその後、彼女はたくさん訓練を受けて上達した。完璧ではないかもしれないが、より効果的にコミュニケーションがとれるようになったのは間違いない。彼女がプレゼンを学んだのは50代のときだ。
プレゼン力をつけるのは自転車に乗るようなものだ。最初はゆらゆらしながら補助輪に頼って乗っているが、そのうち補助輪も取れて乗り回せるようになる。1回やり方さえ身に付ければ、あとはそれを継続していくだけだ。
――五輪招致など国際的な大舞台だけでなく、たとえば上司に自分の企画を提案したり、商品を売り込んだり、日常的な場面でもプレゼンすることは多いです。プレゼンの素人がまずするべきことは何でしょう。
何よりまずプレゼンする相手を知ることが必要だ。「誰に対して話をするのか」を考えないといけない。それから、その人がなぜここへ来てくれたのか、何を目的、またはゴールとして話をするのか、自分が相手に何をしてあげられるのか、ということを考えないといけない。
誰を相手にプレゼンをするのか、をきちんとやらなければ、ちゃんとしたプレゼンターにはなれない。そのうえで、上司を喜ばせたいのか、まずは自分を好きになってもらって将来のビジネスにつなげたいのか、プレゼンのゴールを考えることが大事だ。ゴールを設定した後は、その目的を達成するためにはどういうコンテンツが必要なのかを考えていく。
――まず聴衆を知って、コンテンツを考えると。そのほかのテクニックで簡単に身に付けられるものはありますか。
これは世界共通だと思うが、誰がプレゼンしていようと、どういう聴衆だろうと、だいたい5分話すと聴衆が集中力を欠いてくる。そこで、たとえば5分ごとに質問をしてみるとか、新しいスライドを出してみるとか、資料を手渡すとか、聴衆の興味を引き直すことをしなければならない。そうでなければ、聴衆はどんどん眠りに近づいていってしまうだろう。
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