ホンダ「3代目インサイト」発売1年後の通信簿 月販1000台をクリアできない本質的な理由
インサイトの販売不振に対するホンダ広報は、「日米ともに4ドアセダン市場の縮小によるものではないか」との見解を示したが、それだけではないように思う。
歴史をまず振り返ると、初代インサイトは燃費性能で世界一を狙うため2人乗りのクーペ姿で登場した。車体にはミッドシップスポーツカー「NSX」で培ったアルミニウムが使われており、車両重量は1トンを切る820~850kgと軽自動車並みの軽さであった。国内では、本社のある東京都港区青山から鹿児島市まで、無給油で走破する挑戦なども行われた。
ホンダが、(2輪4輪汎用を合わせると)世界一のエンジンメーカーと自認するだけあって、初代インサイトのハイブリッド方式は、排気量995ccのガソリンエンジンに補助的なモーターを組み合わせる機構で、変速機を備えていた。
その運転感覚はエンジン車と変わらない。トヨタが2年前の1997年に登場させた初代プリウスが、ガソリンエンジンと電気モーターの“いいとこ取り”のハイブリッドシステムとしたのとは対照的な手法であった。
初志貫徹でヒットしたプリウス
初代インサイトは自主独立をうたい、独創の技術で開発を進めるホンダらしいハイブリッド車ではあったが、2人乗りではあまりにも実用性に欠けた。したがって販売台数は伸びず、2006年に生産と販売を終了したのである。
プリウスも、初代は必ずしも販売台数が思わしくなかった。だが、「21世紀へ向けてクルマの燃料消費を半分に減らす」とした初志を貫徹するため、2003年には2代目へフルモデルチェンジをしている。2代目のプリウスは、2009年フルモデルチェンジにより3代目へ移行した以降も2011年まで継続して併行販売された。
この間にタクシーでの利用を含め、プリウス全体の販売が急上昇し始めた。タクシーは燃料価格の安い石油液化ガス(LPG=通称プロパンガス)を使っている。ところが、たとえガソリンを給油しても、ハイブリッド車の燃費のよさで燃料経費がLPG車以上に安上がりになるのであった。それほど、トヨタのハイブリッド方式での燃費向上効果は大きかったのだ。
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