英オカド「日本のネットスーパーの機は熟した」 イオン提携、CEOが確信する日本市場の可能性

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ーーネットスーパーが浸透している中国では、大型倉庫からの出荷に加えて、店舗にデジタル技術を導入し、出荷システムを構築している企業があります。

中国は大型倉庫型を持つ企業もあるが、そこで働くスタッフの数が多い。人件費が安いのでそれが可能なのだろう。われわれロボティックス企業は省人化に寄与する。注文が届いてから発送まで一般的には74分かかるところを、われわれは15分でできる。

つまり、われわれのビジネスモデルは中国やインドよりも、先進国の方が成果が出やすい。実際の提携先も北米やオーストラリア、イタリア、スウェーデンなどで、いずれも人件費が高い。もちろん、中国での展開も考えているが、その場合はビジネスモデルを変えていくことになるだろう。

各国に応じて柔軟に配送システムを設計

ーーAIを駆使するオカドの配送システムは、日本でも適用できるのですか。

アルゴリズムを解析し、運営最適化を図るわれわれのシステムは、国や企業、配送車両の大きさに合わせて非常に柔軟に適用できる。提携先の企業が配送を業務委託するのか、小型バイクや自転車を使用するのか、もしくは消費者に店舗に来てもらって商品を持ち帰ってもらうのか、あるいは宅配ロッカーの仕組みにするのか。その国のマーケット事情に合わせて、設計してもらえればよい。

「イオンには最初から親近感があった」と語るオカドのスタイナーCEO(撮影:風間仁一郎)

「イギリスでこれが成功したから、日本でも同じ方法で運営してくれ」、ということはない。「新しい配送システムを組みたい」という要望があれば、われわれがデータサイエンティストや技術者を派遣して、新機能を一緒につくっていく。

ーー配送のドライバー不足が深刻な日本では、ネットで注文して店舗で商品を受け取る「C&C(クリックアンドコレクト)」方式が有効ではないか、という見方が強まっています。

イオンが持つグループ合計2万店以上の店舗網は、それは大変な強みになる。実際に、自動化倉庫から店舗に配送し、そこで商品を受け取ってもらうのが一番効率がよい。海外のパートナーでは、C&Cを採用している企業が多い。イギリスは少ないが、アメリカはC&Cが浸透している。

イオンはたくさんの店舗を持ち、それぞれのロケーションもよい。「今日は何時に帰れるかわからない」というお客さんが、帰宅途中にある店舗で商品を受け取りたいという需要は必ずあるだろう。一方、「この時間だったら子どもが宿題をしているので、必ず自宅にいる」というような状況ならば、直接自宅に届けるほうが便利だ。

ーーEC(ネット通販)の巨人であるアマゾンの脅威を感じていますか。

日本市場で今後アマゾンに対立していくのはイオンだ。われわれはソリューションを提供して、パートナーがアマゾンと戦っている。アメリカのウォルマートやアマゾンが今後も成長していくのは間違いないだろう。ただ、われわれといっしょに事業を展開すれば戦える。

とはいうものの、オカドもイギリスでは「アマゾンフレッシュ」(アマゾンの食品ECサービス)と長い間対立している。ただ、オカドが自社運営する食品ECの2018年度の成長率は、アマゾンフレッシュを上回ったことを強調しておきたい。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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