日本の「ロケット産業」が国だけに頼れない実情

キヤノンも強力に推す民間ロケットが描く夢

近年、宇宙の民間活用は日に日に熱を帯びている。スマートフォンのGPS情報や天気予報に使う気象観測衛星だけではない。例えば農業では作物の生育状況や害虫の発生状況を監視したり、漁業では海水温の変化を観察することによって最適な漁場を探ったりすることができるようになっている。

衛星の小型化・低コスト化も進んでおり、多くの企業が宇宙ビジネスに参入している。人工流れ星のように、斬新なアイデアで参入を試みる動きもある。調査会社ユーロコンサルは、重さ500キログラム以下の小型衛星は2027年までに累計7000機打ち上げられると予想する。

激しさを増すコスト競争

一方で、圧倒的に足りないのが衛星を宇宙空間に運ぶロケットだ。現在、日本ではJAXAが内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県)からイプシロンロケットを発射させているほか、三菱重工業と共同でH3ロケットの開発も進めている。

ただ、小型衛星はこれらに相乗りする形で打ち上げられる。これでは小型衛星の事業者にとっては好きな時期に打ち上げられない。小型衛星の打ち上げ数が増えることで、順番待ちが長くなってしまうのだ。さらに打ち上げられる軌道も、ロケット発射の主目的である大型衛星などが優先されるため、1年近く宇宙空間で軌道修正しながら狙った場所に移動することもある。

スペースワンの太田信一郎社長は「使い勝手のいいロケットを開発する」と語った(記者撮影)

そこで、スペースワンが目指すのが、衛星を飛ばしたい時に飛ばしたい軌道に打ち上げられる「使い勝手のいいロケット」だ。液体燃料ではなく固体燃料を使うことによって、現状では数ヶ月ほどかかると言われるロケットの組み立て期間を最短7日に抑えることができるとしている。2020年代半ばには年間約20機のロケット打ち上げを目指す。

民間によるロケット打ち上げでも、一歩先に進んでいるのはアメリカだ。テスラのイーロン・マスクCEOが経営するスペースXはすでに数多くのロケット打ち上げ実績を残しており、ほかにも同じくアメリカのロケットラボも先月9機目のロケットを打ち上げた。さらにロケットラボの打ち上げ費用はおよそ500万ドルに抑えられたという。

そのため、スペースワンがビジネスとして成功するためには、競争力が必要になってくる。太田社長は起工式後の会見で、コスト見通しについて問われ「使い勝手のいいサービスを提供することを通じて競争を勝ち抜きたい」と説明。具体的な金額には触れなかった。価格を抑えたうえで、発射の確実・安全性や契約のしやすさなどのアピールポイントを磨けるかが今後の勝負の分かれ目となる。

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