開発続く「物流施設」、駅チカ物件が増えるワケ 託児所やスポーツジム併設の施設も登場

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物流施設の内部は従来の「倉庫」の面影はない。写真はGLP流山1内のカフェテリア(記者撮影)

日本GLPが昨年2月に千葉県流山市で開発した「GLP流山1」。延べ床面積約13万平方メートルの巨大施設には、施設内にコンビニやカフェテリアのほかに託児所を開設した。「(子育てのために)これまで働くことを諦めていたが、『託児所があるから働きたい』という人もいる」(帖佐社長)。

オリックスが今年3月に埼玉県松伏町で開発した「松伏ロジスティクスセンター」には、ランニングマシンやエアロバイクなどが並んだフィットネスルームが併設されている。一見物流施設とは縁遠いが、これも人手確保の一環だ。

オリックスの清田衛・物流事業部長は、「物流施設で働く方が、健康になりながら働けるような環境であることを訴求していきたい。女性だけでなく、運動不足などを気軽に解消したい男性パート社員の確保にも追い風だ」と狙いを話す。施設で働く従業員であれば、仕事がない日でも利用されているようだ。

立地戦略にも影響

深刻な人手不足は、物流施設の開発立地にも影響を与え始めている。

「物流施設開発を始めた頃は、インターチェンジからの距離が最大の関心事だった。だが現在は駅からの距離を重視するようになっている」。三井不動産の三木孝行・常務執行役員ロジスティクス本部長は、近年の物流業界の変化をこう振り返る。

これまでの物流施設は、高速道路の出入口に近い場所が一等地とされてきた。荷物を運ぶトラックが迅速に配送地まで行き来できることが重要だった。だが時代は下り、輸送効率よりもまず施設内の作業員確保が重要視されるようになり、電車や路線バスなど公共交通機関で通える土地が脚光を浴びている。

三井不動産が今年10月に竣工させた「MFLP船橋Ⅱ」は、JR京葉線「南船橋」から徒歩10分の距離にある。さらに同社が現在開発を進める佐賀県の「MFLP鳥栖」や「MFLP大阪交野」も、最寄駅から徒歩圏内だ。

「GLP流山1」内に設置されたバス停(記者撮影)

香港に本社を構える物流施設開発会社「ESR」は昨年9月、埼玉県久喜市に延べ床面積約15万平方メートルの物流施設「ESR久喜ディストリビューションセンター」を開発した。もともとは東京理科大学のキャンパスがあった場所で、久喜駅からも路線バスが通っている。「施設が出来上がる前から、『いつパート社員の募集が始まるのか』という電話がかかってきた」と担当者は述懐する。

前述の「GLP流山1」の周辺にはもともと駅やバス停がなかったが、「バスがなければ通せばいい」と言わんばかりに、敷地内にバス停そのものを作ってしまった。現在は東武バスがつくばエクスプレス「流山おおたかの森」駅まで、従業員専用の直行バスを運行している。日本GLPは将来的に、近隣のスーパーマーケットなどにも専用のバス停を設けたい構えだ。

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