バスに大苦戦、特急「ふじさん」は生き残れるか 強敵の「高速バス」が本数や料金で圧倒する

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そして、(4)新駅設置は、「ふじさん」および御殿場線の利用促進の切り札となる可能性を秘めている。御殿場駅と御殿場プレミアムアウトレットの間は約3キロの距離があり、無料シャトルバスへの乗り継ぎが必要である。「御殿場市地域公共交通網形成計画」にも同アウトレットなどの周辺の土地利用が進んでいる地域への新駅設置について、検討を進めることが明記されている。

本数増加と料金見直しには、小田急とJR東海の2社の間での調整をクリアする必要がある。沼津乗り入れおよびJR東海による御殿場線向け特急車両の廃止の背景には、同社の東海道新幹線優先の経営方針があったと推察され、「ふじさん」活性化のための投資を望むのは難しい。

そうであれば、小田急による車両のグレードアップは現実的な方策となる。車両のグレードアップを図ることが特急ロマンスカーの魅力向上につながる。小田急にとっては「ふじさん」の小田急線内完結利用が増えるだけで増収となる。

御殿場線活性化の好機

今のところ、小田急は1990年代後半に導入した30000形EXEのリフレッシュ工事を進めており、当面新型特急の導入は見込みにくいが、車両置き換え時には新しいコンセプトの特急車両の投入を検討したい。そして、新駅設置は「ふじさん」はもちろん、御殿場線の活性化につながる。地元負担との折り合いがつけば、JR東海にとってもメリットが見込める。

折しも、小田急は同アウトレットに併設するホテル「HOTEL CLAD(ホテルクラッド)」と日帰り温泉施設「木の花の湯」の開業日を12月15日に決定した。小田急はこれらの施設の開業日から2020年2月23日までの一部の土休日に「ふじさん」1往復を増発し、5往復体制とする。

御殿場エリアにおける大型集客施設の開業は「ふじさん」にとって絶好の機会である。東京―御殿場間の鉄道輸送と御殿場線の活性化につなげたい。

大塚 良治 江戸川大学准教授

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おおつか りょうじ / Ryouji Ohtsuka

1974年生まれ。博士(経営学)。総合旅行業務取扱管理者試験、運行管理者試験(旅客)(貨物)、インバウンド実務主任者認定試験合格。広島国際大学講師等を経て現職。明治大学兼任講師、および東京成徳大学非常勤講師を兼務。特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会創設メンバーとして、近鉄(現・四日市あすなろう鉄道)内部・ 八王子線の存続案の策定と行政への意見書提出を経験し、現在は専務理事。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

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