バスに大苦戦、特急「ふじさん」は生き残れるか 強敵の「高速バス」が本数や料金で圧倒する

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「ふじさん」は1955年10月1日に小田急新宿―日本国有鉄道(国鉄)御殿場間で運行を開始した気動車準急列車「銀嶺(ぎんれい)」・「芙蓉(ふよう)」を嚆矢とする。

1991年3月16日、小田急とJR東海は専用車両である20000形RSEと371系をそれぞれ投入して、種別を特急に変更し、運行区間を新宿―沼津間に拡大。編成はグリーン車を2両をつないだ7両とした。

JR東海371系で運用した「あさぎり」(写真:HAYABUSA/PIXTA)

JR東海にとってはJR東日本区間を経由せずに東京と静岡県東部や西伊豆の間の直結ルートを確保できるとともに、小田急にとっても特急ロマンスカーの行き先に箱根と江の島のほかに、西伊豆を加えることができた。

小田急は特急「あさぎり」運行開始と同時に、沼津駅―松崎間でグループ会社の東海バスによる特急バス「スーパーロマンス」を投入し、西伊豆観光への誘客に努めた。このように小田急とJR東海の両社にとってメリットがあったことが、専用車両投入による特急昇格に結びついたと考えられる。

不況が利用に影を落とす

「あさぎり」の特急昇格が計画された時期はバブル経済による好景気に沸いた時期であった。しかし、同列車運行開始後に平成不況が進行し、「あさぎり」の御殿場線内の利用にも影を落とすようになる。

『御殿場市統計書』によると、特急昇格から10年後の2001年度の「あさぎり」全利用人員(以下、「全利用人員」)は93万0831人、そのうち御殿場線区間利用人員(以下、「線内利用人員」)は42万1996人(ただし、小田急線内松田発着旅客を含む。以下、同じ)で、「全利用人員」に占める御殿場線内利用人員の割合(以下、「割合」)は45.3%であった。

「あさぎり」沼津発着最終年度となる2011年度の「全利用人員」は68万7958人、うち「線内利用人員」は25万5144人で、「割合」も37.1%となり、「全利用人員」、「線内利用人員」、「割合」のすべてが2001年度比で減少した。

そして、2012年3月17日のダイヤ改正に伴い新宿―御殿場間に運行区間を縮小するとともに、運用車両も小田急60000形MSE6両編成に一本化する。最新のデータである2016年度では「全利用人員」55万9697人、「線内利用人員」17万1158人、「割合」30.6%となった。

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