鈴木亮平が「大河主演俳優」の次に目指す場所 「どれだけ準備できたかが仕事の質を決める」
「危険なのは、準備したものをそのまま持っていって、それに固執してしまうこと。それよりも現場で感じたこと、生まれたものを大事にしたいんです。だから、忘れることは難しいけど、とても重要です。それに、ちゃんと準備したものであれば、全部忘れても必ず本質は残る。そう自信を持てるぐらいまで事前にしっかり準備することが、いい仕事をするために大切なんだと思います」
自分は天才じゃない。だからこそ、努力し続ける
例えば、一流のビジネスパーソンが読書を愛し、インプットを怠らないように。あるいは一流のアスリートが基礎を磨き続けるように。俳優という職業を選んだ鈴木さん自身は、作品と作品の合間で、己を高めるためにどんなことをしているのか。
そう尋ねると、大事にしまった小箱のふたを開けるように、鈴木亮平らしい哲学が言葉となってあふれ出した。
「役者って人間力がほぼすべて。僕らが『役を入れる容れ物』だとしたら、その容れ物を大きくしていかないと、大きな役を入れられなくなってしまう。だから、器を広げる作業をするようにしています。僕の場合、方法は2つ。1つは、人と会うこと。そしてもう1つは、自分の感情が揺さぶられるような経験をすることです」
人と会うことを大切にするのは、それが成長につながるからだという。まだ自分が知らないこと。まだ自分が経験したことのないこと。人を通じて、そんな未知を自分の容れ物に放り込み、鈴木亮平という器を大きくしていく。
「この間も、すごくいいなと思う女優さんが2人いて。その方がどちらも同じ先生から演技を習っていると聞いて、すぐにつなげてもらいました。先生と食事をしながらいろんな話を聞いて。
今はただ話を聞いているだけで、そこでもらった言葉をどう生かしていくかはわかりません。けど、単純に刺激になったし、いつか自分が途方に暮れたとき、この人に相談しようと思える人に出会えた。それは、自分にとってすごく実りのある出来事だったと思います」
ビジネスの世界でも「メンター」という言葉が広く使われるようになった。職種を問わず、前へ前へと進む人間にとって、「標」となる存在の重要性は大きい。
「僕にとって感情を揺さぶられる1番の経験は、いい映画を見ることです。意外と現実の出来事より、そうやって映画で疑似体験した感情のほうが強烈に残ったりする。今も時間があるとよく映画は見ますね」
36歳。年齢でいえば、中堅に入った。それでもインプットは絶やさず、つねに向学心を持ち続けている。その尽きない貪欲さの根源にあるものは何なのか。
「天才だったら、たぶんそんなことしなくてもいいと思うんですよ。この世界、やっぱり天才タイプというのはいるので。でも、僕はそうじゃないから、つねに努力をしないとダメ。だから学ぶ気持ちを忘れたくないんです」
僕は、天才じゃないから。その言葉を聞いたとき、「まだ自分の芝居に満足していないし、もっといろんな経験を積みたい」と熱を込めた冒頭の言葉がリフレインした。当世随一の演技派は、おごりも慢心もまるで知らない。
「だから、何がプロフェッショナルかと聞かれても、正直言えば今はまだわかりません。少なくとも、何がプロかなんていうのは自分で決めるものではないかなと。周りの人から“あの人はプロだ”と認めてもらえて、初めてプロと言えるんだと思います」
成功体験から鮮やかに脱却し、つねに新しい挑戦の場を求め、いっさい妥協をしない。その姿勢を、プロと呼ばずに何と呼ぶのだろう。たとえ本人がどれだけ謙遜しても、世の中がこう言うはずだ。俳優・鈴木亮平は、まごうことなきプロフェッショナルだと。
(取材・文/横川良明 撮影/洞澤 佐智子〈CROSSOVER〉
企画・編集/栗原千明〈編集部〉)
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