認知症「800万人時代」に銀行はどう備えるか 業界横断で研究団体発足、研修や資格認定も
認知症高齢者向けの金融商品開発も進みつつある。三菱UFJ信託銀行は今年3月に「代理出金機能付き信託」を販売開始した。あらかじめ家族などの代理人を指定しておけば、認知症になったときに代理人が専用のスマホアプリを通じて契約者のために必要な資金を出金でき、ほかの家族にも出金内容や入出金履歴が通知される。
これによって、認知症になった後も口座が凍結されることがなく、代理人を通じて自分らしくお金を使うことができ、他の家族によって代理人の不正利用も防止できる。同行リテール企画推進部企画グループの櫨原大輔主任調査役は「認知症になる前のサービスを拡充する重要性を考えて開発した」と説明する。現在、ビジネスモデル特許を出願中だ。
金融ジェロントロジー団体も発足
業界横断的な取り組みも進行中だ。証券最大手の野村ホールディングスと三菱UFJ信託銀行は今年4月、慶應義塾大学と共同で一般社団法人の「日本金融ジェロントロジー協会」(会長:清水雅彦・慶應義塾大名誉教授)を設立した。
金融ジェロントロジー(老年学)とは、長寿や加齢によって発生する経済課題に対し、経済学や医学、心理学など関連分野の知見を取り入れながら解決策を見つけ出す新しい研究領域。日本では慶應大が先行しているとされる。
同協会はその研究成果を広く金融業界に普及させることを目的としており、とりわけ高齢顧客の認知能力低下に金融機関がどう備えるかに焦点を当てている。金融機関担当者に向けた研修教材や各種情報の提供のほか、3年後には資格認定も始める予定だ。現在、銀行、証券、生命保険の16社が会員となっている。
同協会の抱井六郎・理事業務部長は「日本は高齢化のフロントランナーであり、認知症高齢者への対応はオールジャパンで取り組むべき課題」と話す。これからも研修内容のブラッシュアップや認定資格の設計を進め、趣旨に賛同する会員の拡大に取り組んでいくという。
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