私募ファンド破綻で変化? 氷結した不動産市場、長期投資家が売り物待ち《特集・不動産/建設》
ついにダヴィンチ・ホールディングス傘下の私募ファンドの一つがデフォルト(債務不履行)を起こした。このファンドは東京駅前の大型オフィスビル「パシフィックセンチュリープレイス丸の内」(以下PCP)を保有していたが、これを担保とするローンの返済期限延長に失敗。ノンリコースローン(非遡及型融資)であるため、デフォルトの結果、PCPの所有権は債権者に移った。
「同じくダヴィンチ傘下の“軍艦ビル”(東京港区の芝パークビル)も再度の期限延長は難しい情勢。今後、PCPは債権者による物件売却が予想されるが、表面的には市況悪化要因でも、不動産市場にはよいこと。地に足がつくという感じだ」と、みずほ証券の石澤卓司・チーフ不動産アナリストは語る。PCPは当初約2000億円で購入されたが、投資利回りはわずか2%程度と超高値取引だった。「今なら1000億円前後の攻防か。大手デベロッパーが興味を示している」(石澤氏)。
今後、こうした私募ファンドなどのデフォルト案件の市場放出が増えることで、“凍結”状態にあった不動産売買市場が正常化に向かうかもしれない。そんな観測が出ている。
買い手は長期運用型へ 中東マネーや韓国年金も
近年の国内不動産売買市場を見ると、2007年度の5・5兆円をピークとして08年度は1・9兆円へ急減、09年度も4月~9月28日まで前年同期比約2分の1の水準だ(都市未来総合研究所調べ)。今年に入ってからの大型取引を示したのが下の表だが、4~6月期には日本生命のAIG大手町ビル買収などいったん勢いを見せたものの、7月、8月と大型案件はゼロだった。
「買い手としてREITが減ってきた。売り物は私募ファンドなどからもっと出てきてもいいはずだが、キャッシュフローのいい高額物件のオフィスについては、金融の融資姿勢が緩和してリファイナンス(借り換え)が進んでいるためか出てこない。あまり安値では売りたくないという売り惜しみの動きかもしれない」(佐藤泰弘・都市未来総合研究所主席研究員)。とすれば、やはり私募ファンドの出方が今後の市場動向を左右しそうだ。