都心優良ビルも競って“値引き” 空室率は峠を越えたが賃料に底打ち感なし《特集・不動産/建設》
丸の内・大手町筆頭に都心3区の優位が加速
ただ今後、都心3区は建て替え中心で実質的にはオフィス面積が増えない。そうなると、賃料面でも他の地域に比べて優位性が維持される。逆に、都心3区以外は賃料の低下傾向が続くことが予想される。
石澤氏はさらに、「都心3区の中でもビジネスインフラに競争力がある丸の内・大手町地区が独り勝ちする可能性が強い」とも指摘する。背景には実需だけでなく、投資対象としての魅力も当然ある。
たとえば、今年5月に日本生命が1155億円で購入、高値取引との見方もあった丸の内のAIG大手町ビル。「賃料が坪4・5万円だと、利回りは2・7%で、かなり低い。しかし、容積率はかつての1000%から現在では最高1600%まで拡大されており、これで再計算すると利回りは4・1%まで上昇するので、高値取引とは言えない」と石澤氏は指摘する。申し分のない立地に加え、再開発による潜在価値の大きさがマネーを引き付けるわけだ。
今後も、テナントの吸引力が高いとされる丸の内・大手町地区の開発には、デベロッパー各社がしのぎを削っている。筆頭は三菱地所だ。
同社は大手町を含む丸の内地区にある約100棟のビルのうち、30棟を所有もしくは運営している。丸の内再構築の名目で、1998年からの10年間に5000億円を投じて、旧丸ビルなど6棟を建て替えた。また、09年からの次の10年間では、さらに4500億円を投じる。新規のビル取得にも積極的で、昨年4月には「りそな・マルハビル」のうち、りそな銀行の持ち分(全体の57%)、今年3月には「朝日生命大手町ビル」をそれぞれ特別目的会社(SPC)で取得している。