米国がデジタルヘルスブームでも直面する課題 市場は急拡大だが既存医療とのせめぎあいも
これに対し、アメリカ企業はいろいろ努力している。例えば、展示会で説明を受けた喘息患者向けの電子吸入器は、きちんと吸入できるかどうかのセンサーがついており、その場で自分の吸入状況を把握できるし、そのデータを医師にも簡単に提示できる。
患者からみると、安心で便利なわけだ。一気にプラットフォームになるのは難しくても、こういった特定分野での発展が、最終的には患者を巻き込むデジタルヘルスの変革をもたらすといえる。
3つ目の障害は保険会社である。アメリカの医療は高価で非効率(一般的な病気だったら診察までに2、3カ月待ち)なことで有名だが、その原因の多くは(支払いを担う)保険会社にあるともいわれている。
アメリカでは、通常は公的健康保険(高齢者や身体障がい者対象のメディケア、低所得者対象のメディケイド)より民間保険を利用している。
保険会社を介して病院との支払金額の交渉(日本だと信じがたいが、アメリカでは医療費の支払金額は交渉次第……)が行われる。保険会社による医療システムだと言っても過言ではない。保険会社は、デジタルヘルス時代において、従来どおりの医者⇔患者の間ではなく、AI⇔医者⇔デバイス⇔患者といった拡大した範囲で、どのような役割を果たし、どのように利益を獲得すればいいのかを模索しているようだ。
アメリカの事例は日本でもヒントになりうる
グローバルマーケットインサイトの資料「Digital Health Market Size By Technology」によれば、アメリカのデジタルヘルス市場は、2024年までに1520億ドルの規模に成長すると予測されている。だが、プラットフォーム不在、患者の個人情報不安・デジタルデバイド、消極的な医師・保険会社など、さまざまな困難に直面している。
しかし、それらの困難を乗り越え、また医療費削減、健康増進、医療品質向上のため、行政、医療機関、保険会社、大企業とベンチャー企業が、患者を巻き込みながらデジタルヘルスの発展と普及に努力しているのも明白である。国民皆保険制度が普及しつつも、持続可能性の観点から多くの課題を有する日本でも、類似した課題がある。アメリカの課題とその克服努力もヒントになるであろう。
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