米国がデジタルヘルスブームでも直面する課題 市場は急拡大だが既存医療とのせめぎあいも
ヘルスケアサービスにおいて、アメリカは最も活発な国だ。2017年におけるアメリカの医療費は3.5兆ドル、1人当たり1万0739ドルに達する。総額も1人当たりも世界で最も高い。しかも、医療費のGDPに占める割合は年々高まっている。
しかしながら、アメリカ人の平均寿命等の健康データをみると、先進国では最低レベルである。例えば、2016年における平均寿命は、日本が世界2位で84.2歳であるのに対し、アメリカは34位の78.6歳だ。平均寿命だけでは医療制度の良しあしを考えるのは難しい面もあるが、高額な医療費に見合った健康状態が実現できていないという課題を抱えているといえるだろう。
デジタルヘルスのブームに沸くアメリカ
そうした中でアメリカでは、デジタルヘルスビジネスブームが到来している。公的皆保険制度をもたなかったアメリカでは、医療における技術革新には力を入れてきた。デジタルヘルスは、スマートフォン、インターネット、AIの技術を利用し、結果的に、消費者の健康意識や健康にまつわる行動を改善することによって健康を増進し、患者がよりよい医療サービスを受けられるようにするものである。
デジタルヘルスに関するベンチャー企業は多数生まれている。ユニコーン(10億ドル以上の価値のある未上場企業)も登場してきている。製薬ベンチャーをアメリカ・日本で上場させ、今ヘルスケア投資とコンサルティングを専門にするエンジェル投資家のTakashi Kiyoizumi(清泉貴志)氏は「 デジタルヘルスはハイプ(誇張・過熱)のようなところもあり、ベンチャーが乱立している」とみている。
筆者は10月中旬にボストンで開催された「コネクテッド・ヘルス・カンファレンス」に参加した。
デジタルヘルスをメインにした大規模な会議で、世界中から参加者が集まっていた。
今回は、カンファレンスでのプレゼンテーションや参加者の意見を踏まえ、アメリカのデジタルヘルスの課題を整理しつつ、アメリカ企業の動きを紹介したい。
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