「走りたい」をかなえる競技用義足に普及の課題 パラアスリート山本篤選手が教えるクリニック
2019年1月末に事故で両足を大腿切断した20代の男性が参加していた。
もちろん、スポーツ用の義足を使うのは初めてで、装着して立ち上がってもヨロヨロしている。それでも、徐々に歩けるようになっていく。ただ、ソケット部分が合わないのか、筋力が足りないのか、すぐに座り込んでしまう。
参加した理由は「自分でできることを増やそうと思いました。健常のときもそんなに走っていませんでしたが(笑)。走れるようになったらうれしいし、歩くのが楽になる。自信をつけようと思いました」。
ポポフ氏は「両足切断の人は、健常者が1時間歩くとしたら、7時間歩くのと同じくらい、体力を使う」と話した。まして、事故に遭ってまだ数カ月しかたっていない。それでも、休み休み、トレーニングメニューをこなしていく。「走る」という目標はかなりの励みになるようだ。
100万円する義足は全部自己負担
「走る」までには順序があるようなので筆者は見ていた。サッカーなどで義足の扱いに慣れてから、走るためのメニューが始まる。膝の高さを変えながら歩く。2人1組で1人が前傾姿勢になったもう1人を支えて歩く。両ひざを伸ばして歩く。そして少し前傾して小走り。腕を振って小走り。小さいステップを徐々に大きくして前に走る。最後には自分でコントロールできる速さで、10人全員が走った。
両足義足の男性。スピードは遅いが、確かに走った。「思ったより走れました」といい、「バランスが難しいのと、まだ筋力がついていないんで、気持ちいいけど複雑な気持ちです」と大汗をぬぐった。そして「この義足は安い買い物ではないですし……。でも、将来はパラリンピックも考えたいです」と笑顔になった。
山本選手は義足の性能の確かさはもちろん認めているが「100万円ぐらいするんです。それが全部自己負担です」と、指摘した。一般の人が「走りたい」という希望をかなえるには、金額と折り合いがつくかどうかわからない。
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