「走りたい」をかなえる競技用義足に普及の課題

パラアスリート山本篤選手が教えるクリニック

クリニック2日目、義足の調整や基礎トレーニングを終え、実際に屋外のグラウンドで競技用義足を使用した。 

義足を使いながらサッカーボールを蹴る女性(筆者撮影)

この日はサッカーボールを用いて、義足を使って蹴るトレーニングから始まった。みんな、初めて義足でボールを蹴るということを体験しているのだろう。うまく蹴ることができないのだが、徐々にコツを覚えていくのか、格好よく蹴る人も出てくる。

山本選手とポポフ氏が参加者を回って声をかけ、義足をうまく使うための指導やストレッチ、筋力、とくに体幹を鍛えるトレーニング方法などを教えていく。参加者のほとんどが初めて競技用義足をつけてみたのだという。

健常者にはわからないのだが、普通の義足と競技用義足は、見た目ももちろん違うが、バランスのとり方が違うらしい。オットーボック・ジャパンの八幡済彦プロダクトスペシャリストによると、競技用義足は「健常者でいうと、つま先立ちしている感覚」なのだという。膝継手も「後ろに体重がかかりすぎるとすぐに折れて、倒れてしまう」と、扱いはかなり難しいようだ。

「もう1度、走りたい」をかなえる競技用義足

両足または片足がつま先立ちだと、健常者でもバランスがとりにくいし歩きにくい。それでも、カーボン製が主体という板バネが、その名のとおりバネになって反発して推進力を生むので、膝継手をうまく使えれば前に進みやすい。

もともとスポーツでも通常の生活で使うような義足で行っていたそうだが、速く走る、遠くに跳ぶ、というために「かかとはないほうがいいということになった。アスリートの意見で改良してきました」(八幡氏)と、今のような形になったのだという。

男女問わず幅広い年齢の方が参加していた(筆者撮影)

このクリニックのテーマは「走る」こと。下肢切断者は普段の生活では走ることはないというか、通常の義足では走るのが難しい。

「もう走れない」と思っている人も多いそうで「もう1度、走りたい」という希望も持っているという。それをかなえるのが、競技用義足になる。

山本選手は「運動して健康だった人が義足になったとたんに運動できなくなる。走ることもできない。気持ちも落ち込む。でも、義足を正しく使うレクチャーを受けたら、もう1度走れるようになります。今までのクリニックに中学生から60代、70代の方も来ていますが走れなかった人は1人もいない」と、参加者を励ます。

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