星野リゾートがハワイで打つ「米国温泉」の布石 念願の世界チェーンへ、北米進出に足がかり

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世界有数のリゾートであるハワイはここ10年、観光客数を右肩上がりに増やしている。2018年には989万人が訪れ、うち15%を日本人が占めている。ハワイ人気を受け、全日本空輸が今年5月、520席の大型旅客機をハワイ路線のためだけにウミガメの特別塗装で投入するほどだ。

こうした勢いを背景に、ハワイ州にあるホテルの平均客室単価は約278ドルとニューヨークを追い抜いた。日本の大手バス会社・国際興業傘下の京屋グループが進める「シェラトン・プリンセス・カイウラニ」の再開発や、今年10月の三井不動産による「ハレプナ ワイキキ バイ ハレクラニ」のリブランドオープンなど、大型の改装・開発が目白押しだ。

ハワイのリピーター客が主要顧客に

サーフジャックが主要顧客とするのは、ハワイへのリピーター客だ。ハワイの観光客は60%超がリピーターで、星野代表は「何度もホノルルに行く人々の目当てはワイキキビーチだけでなく、アロハなカルチャーや人間関係、夜のエンターテインメントを楽しめる都市機能そのもの」と強調する。このようなリピーターのニーズを満たすべく、サーフジャックのプール周辺では映画の上映、DJが懐かしいヒット曲をかけるパーティー、ハワイアンカルチャーのワークショップなど、さまざまなイベントを実施している。

サーフジャックの客室内風景。主要顧客はハワイへのリピーターだ(写真:星野リゾート)

実は星野リゾートがサーフジャックに求める役割は、1ホテルとしての収益貢献にとどまらない。真の狙いは星野リゾートが抱く北米進出、さらには全世界展開という野望の実現だ。

星野リゾートは以前から、地域依存リスクを低減するために、世界展開のビジョンを描いている。星野代表は「近年、訪日外国人の増加と比べて、20代を中心に日本人による旅行が減少し、観光消費額が何度か減少している。

こうした日本観光の『不都合な真実』を踏まえ、国内マーケットへ依存することにリスクを感じている。国内でホテルを増やしたほうが楽な時期に海外へ進出し、アメリカ・ドルやユーロでも稼げる運営会社にならないと、いざというときに手遅れになる」と危機感を募らせる。

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