トランプ「大国外交」で、危機に立つ多国間主義 トランプ氏に物申すリーダーがいなくなった
昨年9月の国連総会でアメリカのトランプ大統領が、「グローバリズムを拒絶し、愛国主義に基づき行動する」と演説した時は、なんとも愚かな発想だとあきれたものだった。ところがトランプ大統領のその後の行動は、この言葉通りであり、しかも時間とともに激しさを増している。
毎年、秋はアジア・太平洋地域にとって東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議やアジア太平洋経済協力会議(APEC)など重要な首脳会議が続き、首相の外遊も増える季節だ。ところがトランプ大統領はこの種の会議にはまったく関心がない。今年も東アジアサミットやASEAN首脳会議を欠席した。トランプ大統領は大統領就任後、この会議に1度も出席していない。
また今年は、チリでAPEC首脳会議や国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)の開催が予定されていたが、チリ国内の治安悪化に伴って中止になってしまった。その直後にトランプ大統領は気候変動への国際的な取り組みを決めた2015年のパリ協定から離脱することを正式に表明した。
存在感を失いつつある首脳外交
さすがにトランプ大統領も今年、大阪で開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20)やフランスの主要国首脳会議(G7)には参加した。しかし、これらの会議もトランプ大統領に振り回され、これまでなら当たり前のように合意していた人権問題や地球温暖化問題などへの取り組みが声明文などに盛り込みにくくなっている。
大統領選を1年後に控え、トランプ大統領を取り巻く政治環境は厳しさを増している。トランプ大統領に対する議会の弾劾調査が始まり、ウクライナ疑惑に関して政権内部からもトランプ大統領に不利な証言が相次いでいる。何としても再選を果たしたいトランプ大統領にすれば、もはや他の国のことなどかまっていられないのだろう。その結果、多国間の首脳外交はかつてのような輝きも存在感も失いつつある。
より深刻なのは、主要国の首脳が国際協調主義に反するトランプ大統領の言動に異を唱えなくなったことだ。
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