レバノン「通話アプリ課税」で大規模デモのなぜ 首相が辞意を表明しても怒りは収まらない

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が、実質的な競争のない携帯電話会社の利用料金が割高なレバノンでは、家族や友人とのやりとりに無料通話アプリが盛んに利用されており、増税方針はデモの引き金に。政府は増税方針をいったん撤回したものの、民衆の怒りは収まらず。香港のデモと同様、レバノンの民衆も最終的な要求が成就するまで簡単には引き下がらないだろう。

無料通話アプリへの課税方針はデモのきっかけにすぎない。レバノンでは、長年の経済失政や政治の機能不全に民衆の不満が蓄積してきた。政治が一部の政治家や一族に牛耳られる一方、宗派の利害関係から政治がしばしば停滞。

そのしわ寄せは国民に向かい、政策が実行できずに経済が低迷したほか、電気や水道などのライフラインは機能不全に陥り、ゴミ収集が滞って悪臭が街に充満したこともある。そんな中、国民の怒りを誘ったのが有力政治家のスキャンダルだった。

修士号を取得しても仕事がない

9月にはハリリ氏が首相就任前の2013年、「インド洋の真珠」と呼ばれるセーシェルで恋仲になった南アフリカのモデルに1600万ドル以上を貢いでいたことが発覚。10月に入って森林火災が相次いだ際、実業家や銀行組合、学生らが2009年に政府に寄付した消火ヘリコプター3機が財政難による整備不良で稼働できず森林火災が拡大したとして、政府の怠慢に国民の非難が集中した。

こうした政治の機能不全や汚職、失政の代償を、ワッツアップなどの課税で国民が払わせられそうになったことに民衆の怒りは頂点に達した。

「大学院で機械工学の修士号を取得したが仕事がない」(住民)など、十分な教育を受けても、そもそも職がないので失業する若者が街にあふれている。「大学を出たのにレストランの電話番しか仕事がない」といった声もあり、雇用にありつけた若者も月数百ドルの低賃金にあえぎ、生活費でほとんど消えてしまい、結婚資金もできないとの切実な声は多い。

レバノン紙アンナハルの記者によると、有力政治家は一族の関連企業に政府関連の仕事を流し、一族のコネがないと有力企業の職が得られないケースが少なくない。「誠実な政治家は皆無に等しい。レバノンを愛して国民に奉仕する政治家が必要だ」と住民の訴えは切実だ。

さらに、人口約450万人のレバノンに、シリア内戦で発生した難民約150万人が流入する不運も重なった。ただでさえ老朽化が進む生活インフラへの圧力となり、地方に住むレバノン人によると、1日に数回、計画停電のような形で電気が止まっては回復する状態で、ほぼ半日は停電している。水道も渇水期の夏場には頻繁に断水したという。

ベイルートでも1日に3時間は停電しており、市民は発電機を使って急場をしのぐ。雇用機会の減少や不動産価格の上昇により、シリア難民への不満が強まるばかり。国際的な人権団体アムネスティ・インターナショナルは、5月中旬から8月上旬にかけて約2500人のシリア難民が強制退去処分になったとして、レバノン政府に自制を呼びかけている。

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