「のれん代」が減損する失敗M&Aの特徴は何か 買収パターンを4分類し、減損要因を分析した

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まず、同業種M&Aと異業種M&Aを比べると、異業種M&Aのほうが減損の発生する割合は高かった。これは、異業種M&Aの場合、買い手が対象企業のビジネスモデルに詳しいとは限らないため、買収後の事業運営がうまくいかず、被買収企業の事業との相乗効果を生み出せなかったということが考えられる。

さらに、異業種の場合、「事業の進め方に口を出しにくい」というパワーバランスになりがちで、ガバナンスが効かせにくいという点もある。これらは、定量的に分析できるものではないが、これまでに多くの企業が自己分析していた内容である。

(出所)早稲田大学大学院経営管理研究科の山田英夫教授と筆者が共同研究を行い、のれんの減損要因について調査した結果をもとに作成(以下、同)

次に、国内M&Aと海外M&Aを比べると、海外M&Aのほうが減損発生率は高かった。減損発生の要因は、当該地域・業界特有のリスクを見抜ききれなかったことや、海外ということで物理的距離も遠い地域へのガバナンスが効かせられず、PMI(M&A後の統合プロセス)で企図した相乗効果を創出できなかった、海外当局からの規制などのカントリーリスクを侮ってしまったことなどが挙げられる。

国内で「飛び地」のM&Aをするのはリスキー

異業種M&Aや海外M&Aの減損発生率が高いことは多くの方が予想できると思うが、興味深い内容はここからである。

国内×異業種M&Aと、海外×同業種M&Aでは、どちらの減損発生率が高いのか? 言い換えれば、「エリアの違い」と「業種の違い」のどちらが、減損発生に与える影響が大きいのだろうか?

結果は、海外M&Aよりも「国内異業種M&A」のほうが、減損発生率が高かったのだ。

単に、国内×異業種M&Aの場合は、海外×同業種M&Aよりも減損発生率は低い。だが、国内異業種M&A(99件)のうち、顧客と商材共に異なる「飛び地」の国内企業を買収した場合(58件)に限れば、海外×同業種M&Aよりも減損発生率は高くなったのだ。

これが意味することは何だろうか?

減損の観点から言えば、国内で“飛び地”への新規事業を検討するくらいならば、海外の同業種を買収したほうがいいのだ。筆者は「M&Aを使って、新規事業を創出したい」と相談を受けることが多いが、その新規事業があまりにも本業とかけ離れている「飛び地」なのであれば、考え直したほうがいい。それぐらい飛び地のM&Aは難しい。

顧客と商材、どちらかが買い手と似ているのであれば、シナジーの見込みも立つが、顧客も商材も違えば、シナジーを創出するための基軸となるものがない。減損の観点では、飛び地の買収に金を使うならば、海外同業種の買収に金を使ったほうがいい。

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