「進化狙い、大切な技術は外へ」―日産の挑戦

クルマが示す、「技術で世界に勝つ」ための条件(3)

 日本の製造業が、世界で勝つための条件とは何だろうか。
「オープン・イノベーション」を合い言葉に、仲介者として「世界の技術を結びつける」ことに奔走しているナインシグマ・ジャパンの諏訪暁彦社長が、3回にわたり連載。トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車などをモデルケースに、日本の製造業が技術で勝ち続けるための条件や、課題などについて明らかにする。最終回は、日産自動車の「大胆な挑戦」をとりあげる。
異なる用途で技術を磨きながら、日産は進化を続ける(13年の東京モーターショーで、撮影:尾形文繁)

第1回 トヨタ自動車が狙う、「脱AV家電化」とは?

第2回 ホンダに学ぶ「すり合わせ力」の活かし方

これまでの2回のコラムでは、日本のクルマが技術力で勝ち続ける方法として、製品の性能を左右する「材料開発」や、命に関わる分野での「すり合わせ力」を紹介した。最終回は、日産自動車をとりあげる。「材料開発」や命に関わる領域以外での、同社の「キャッチアップされずに勝つ方法」について、紹介したい。 

なぜ日産は、大切な技術を他社に提供するのか?

実はいま、日産自動車が日本中を回って熱心に説明しているものがある。新車の営業などではない。それは、同社が「次世代のクルマ」に搭載するために開発した、「スーパーモーター」と「3Dモーター」の技術だ。日産自動車は、これらの技術を、「自動車以外の用途でも応用できるよう、他社にライセンスを提供する」と説明して回っているのだ。

まず「スーパーモーター」は小さいながら、一つのモーターから「二軸の動力」を取り出せる効率の良いモーターである。一方の「3Dモーター」は、薄型化・高出力化が可能で、モーターショーのコンセプトカーに積まれたこともある。二つの技術とも、現時点では電気自動車に搭載されていないが、量産の一歩手前まで開発されたものだ。

これまで世界的に見て、大手企業が自前の技術を異業種の企業にライセンス提供することは稀だった。あったとしても、周辺技術がほとんど。日産自動車も同様で、高級車に使用される特殊な手触りの人工皮革を家具メーカーにライセンス提供するなど、周辺技術の提供がほとんどだった。

しかし、次世代のクルマに搭載するために開発された、「クルマの性能を左右する主要部品のモーター」となると、話は全く異なる。なぜ、日産自動車はこのような大切な技術を異業種にライセンス提供するという、大胆な決定を下したのか? 

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