わずか1年で来客数2.7倍「白馬岩岳」の再生秘話 岩岳・スキー場「絶景テラス」開業から1年
スムーズにいくケースばかりではない。今、成功しているマウンテンハーバーに入っている、ザ シティ ベーカリーの誘致も簡単ではなかった。ザ シティ ベーカリーは、長野県軽井沢町に本社を置くFONZ(フォンス)という会社が運営する。
軽井沢や東京都内でそば店「川上庵」や「ベーカリー&レストラン沢村」を複数展開し、飲食業界では有名な会社だ。
「最初に打診したときの反応は芳しくなかった」。和田社長は数年前にFONZの経営幹部に出店を依頼した時の状況を振り返り、苦笑いする。
白馬観光開発のスタッフたちは「一度、山頂からの景色を見てもらったら興味を持ってもらえるのでは」と考え、FONZの幹部を岩岳山頂に招いた。「でも来てもらったのが猛吹雪の日でね。半分諦めていたんだけど、少しだけ晴れた瞬間があって、その景色をきれいだと思っていただけた」。スタッフが何度も白馬の魅力をプレゼンテーションしたことも後押しした。
ゴンドラ1基の改修費は25億円
白馬観光開発がグリーン期に投資する目的は、老朽化したゴンドラとリフトを改修するためだ。グリーンシーズンに観光客を呼び込み数年で利益を出し、改修費に充てる。白馬岩岳スキー場には現在、ゴンドラ1基、リフトが13基ある。計14基の“平均年齢”は30歳を超えている。
欧米のスキー場では、だいたい10~20年でゴンドラを更新するのが一般的だという。このため海外からのスキー客へのアンケートでは、「リフトのスピードが遅い」との声も出ている。雪質では海外のスキーリゾートと引けを取らないとされる白馬のスキー場だが、設備面では後れをとっている。
しかし、改修費用を稼ぎ出すのは簡単ではない。新型のゴンドラ1基を入れるには25億円、高速リフトは6、7億円もの投資が必要になる。和田社長は、「先は見えるようになってきたが、改修に必要な金額とのギャップは依然大きい」と漏らす。グリーンシーズンの利益が出始めたとはいえ、国や自治体の支援なしに単独での改修は難しいのが現実だ。
厳しい経営状況は、白馬村だけに限らない。日本能率協会総合研究所が2018年10月に発表した、全国497カ所のスキー場の経営実態アンケートでは、約6割のスキー場で利用客が減り、赤字に陥っていることが報告されている。
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