住民疑問の声「田園調布浸水」は自然災害なのか 事前や当日の対策は十分だったか

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排水作業が再開したのは翌朝のことだ。大田区は排水作業を中断した件について「もっと早く避難したほうがいいという声もあったが、避難指示が出るギリギリまで対処した」としている。

現場作業員の身の安全を優先するという区の判断があったのだろう。とはいえ、当日も含めて大田区など関係機関の一連の対応に対しては、浸水被害者から疑問の声も上がっている。

水門閉鎖の情報は伝わらなかった

「これは自然災害ではなく、人災」。今回の台風被害で自宅の1階が床上浸水の被害を受けた辻孝子さん(67歳)は憤る。1人暮らしの辻さんは12日、避難勧告のエリアメールを受け取った後、午後5時半に愛犬とともに高台の小学校へ避難。その間、多摩川が氾濫したという情報はなかったので翌朝5時に家に戻ると、辺り一面が水に浸かっていた。「まさに天国と地獄。本当にどうしていいかわからなかった」。

住民が指摘する問題の1つは、適切な情報共有がされなかった点だ。辻さんなど近隣住民によると、12日、田園調布5丁目付近では午後3時頃から避難準備の町内放送が流れ緊迫した状態で、午後5時頃には避難勧告の放送があった。ただしこの時点で丸子川の水位に関する注意喚起はなく、午後6時時点で水門が閉じられたことも知らされていなかった。

「この辺りの住民は、丸子川の水は通常、多摩川へ放出されているのを知っているので、水門が閉鎖されれば行き所のない水があふれることはわかっている。事前に情報を知っていれば、大事なものや必要なものを2階など、より高い場所へ移動できたし、自動車を高台に移すこともできた」と辻さんは話す。辻さんは自宅が浸水被害にあっただけでなく、自動車も水没したという。

エリアメールなどで丸子川の情報が住民に共有されなかった点について大田区は、「担当者が不在のためわからない」としている。だが、排水作業を行っていた部署と、エリアメールや防災行政無線を行っている部署が異なることから、まずはこうした部署間で適切に状況が共有されていたのかという疑問は残る。

もう1つは、事前対策が十分だったか、という点だ。大田区によると、今回の排水作業は「10年に1度あるかないか」という異例の作業だった。だが、台風上陸前から豪雨になる予報はされており、災害対策本部も設置されていた。予測を超える雨量だった可能性はあるとはいえ、事前のシミュレーションがどの程度なされていたのか検証の余地はある。

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