円高“容認”で88円台に、試される新政権の市場対話力

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円高“容認”で88円台に、試される新政権の市場対話力

船出したばかりの新政権が“市場との対話”で見せたわずかなすきを、投機マネーは見逃さなかった。

外国為替市場でドル売り円買いが活発化。9月下旬には円相場が一時、1ドル=88円台前半まで上昇した。投機筋によるドルの売り仕掛けが損失限定の「ストップロス」の円買い戻し注文などを巻き込み、8カ月ぶりの高値へ円を押し上げた。円は対ユーロでも1ユーロ=129円台と7月中旬以来の130円台突破。「独歩高」の様相を呈した。

対ドルでは、すでに8月の97円台をボトムにして上昇局面入り。だが従来は“円高”というよりも、むしろ“ドル安”の側面が強かった。ドル売りを促したのは米国の金利低下。米連邦公開市場委員会(FOMC)で金融当局の金利低め維持の姿勢が鮮明になったのを受けて、ドルの余剰感が再び意識され始めた。

金利低下でいわゆる「ファンディング通貨」と化したドル。調達したドル資金を資源国・新興国通貨などに振り向ける「ドルキャリー(ドル借り)取引」が膨らみ、全面安の状況となった。

日米両国の短期金利も逆転。金融機関同士の貸し借りの指標となるロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の3カ月物は、16年ぶりにドルの金利が円を下回った。

それでも足元の両者の格差は0・06%程度で、ドルキャリー取引の矛先が円に向かうとは考えにくい。主に9月期末を控えた国内機関投資家の資金の本国還流(リパトリエーション)に伴う円買い戻しなどの季節要因が、水準訂正を後押しした格好だ。

投機筋に格好の材料

ドル売りから円買い主導へ流れを大きく変えたきっかけは、藤井裕久財務相の為替相場をめぐる一連の発言。「円売り・ドル買い介入を安易に実施しない」「(最近の円相場は)異常ではない」……。“円高容認”と受け止めた市場では、出遅れ感の強まっていた円が狙い撃ちされた。

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