心証裁判で死刑宣告を受けた母親の不敵な笑み 幸せな家族が惨劇に、犯人は誰だったのか?
警察はダーリ-の供述から白人の男による殺人事件とみて捜査を開始。家の網戸がナイフで切られていたことから、犯人はそこから侵入したとみられた。
ダーリー家は夫婦でコンピューターの基板を作る会社を経営しており、裕福だった。金銭目的の強盗だと思われた……。だが、宝石類は無造作に置かれたままで何ひとつ盗まれてはいなかったのだ。
犯人の目的は何だったのか?
一方でダーリ-の傷は深さ1センチ程度と浅く、2日後には退院できた。その6日後地元テレビ局がある“スクープ映像”を撮影する。
それは死亡した2人の子どもの墓でダーリーが笑顔でガムをかみながらスプレーをまいている衝撃的な映像だった。この映像が放送されると、不謹慎だという声が続出。
そして、警察もダーリーへの疑惑を深めてゆく。彼女は病院に運ばれる途中も、自分の子どもの心配をするわけでもなく、自分が犯人の指紋を消してしまったことをずっと悔いていたというのだ。
鑑定の結果、ナイフにはダーリーの指紋しか検出されなかったのだが、ダーリーは第三者の指紋など検出されないことを知っていたから自分が触ったことをアピールする必要があったと警察はにらんだ。
そして事件から12日後、ダーリーは2人の子どもを殺害したとして逮捕された。凶器のナイフはダーリーの家にあったもの。犯人だったら凶器を用意するはず……さらに家にあったもう1本のナイフには網戸の繊維が付着していた。
このナイフで網戸を切ったと思われる。だが犯人が外から網戸を切って侵入したならば、家にあったナイフを使うことはできない。状況証拠はダーリーの供述がウソであることを示していた。
一方で犯行現場に居合わせた夫ダリンは、妻は無実だと訴えた。
「ダーリーは死ぬほど怖がっていました。あそこまで怖がっている人を見たことはありません。誰かが彼女を殺そうとし、子どもたちを殺したんです。犯人はまだどこかにいます」
だが、検察は悪質な計画殺人だとしてダーリーに死刑を求刑した。
“状況証拠”と“心証”の裁判
事件から半年たった1997年1月、全米注目の裁判が始まった。テレビ局はこぞって中継し、傍聴席を求め長い列ができた。この裁判がここまで注目された背景には、ダーリー事件の2年前に全米を揺るがした大事件の存在があった。
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