ワタミ渡邉会長、「88歳までやる」宣言のわけ 「ブラック企業」批判にどのように応えるのか

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「22世紀のモデル企業になりたい」。記者会見で渡邉氏は何度もこのフレーズを使った。国政では財政再建や原発ゼロ、震災からの復興を訴えてきたが、現実を変えることができなかった。そうした国の課題を民間から変えていきたいと考え、発言を180度転換しての経営復帰に気持ちが傾いていったようだ。

岩手県で農業テーマパーク「ワタミオーガニックランド」を展開する(撮影:梅谷秀司)

復帰して最初に取り組む新規事業として、農業テーマパーク「ワタミオーガニックランド」を打ち出した。東日本大震災で被災した岩手県陸前高田市に、有機農業から食材の加工、販売までを手がける広さ23ヘクタールの「6次産業」の一大拠点を作る。

渡邉氏は「復興のためには人を呼び、その産地のものを売るしかない。ワタミグループのすべてをここで形にしたい。ワタミの象徴の事業になる」と強調する。

創業者でないとワタミのビジョンを描けない

ワタミオーガニックランドについては、2021年3月の開業を計画し、年間35万人の来場をもくろむ。周辺の森林から出る間伐材などを活用したバイオマス発電によってエネルギーをまかない、再生可能エネルギーを推進する。同時に、震災復興や地方創生といった国の課題にも取り組む。

こうした社会貢献事業に加え、経営者としてワタミを再び成長軌道に乗せる意志も示した。9年後の2029年3月期に売上高2000億円、営業利益100億円を掲げた。

一度会社から去った創業者が経営に復帰することで、企業が成長軌道に戻った事例は少なくない。スティーブ・ジョブズ氏が復帰したアメリカのアップルや、柳井正氏が2005年に社長に復帰して以降、成長を加速させたファーストリテイリングの例がある。渡邉氏も「ほかの人がワタミのビジョンを描くのはやはり難しい。創業者じゃなければ発想できないのかな」と話した。

具体的な再成長プランとしては、①宅食事業の強化、②国内外食事業における直営主義からフランチャイズ中心への転換、③中国、東南アジア、アメリカへの外食事業展開、の3点を挙げた。

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