フェラーリが、客にあえて1台少なく売る理由 ゲーム理論が教えてくれる付加価値の本質

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フェラーリの価値づくりにみられる、付加価値の本質とは?(撮影:今井康一)
商品が売れ始めると「品切れは絶対ダメ」と考え、生産量を一気に増やす会社は多い。しかし商品が余って売れ残り、価格も下がってしまうのもよくあることだ。
マーケティング戦略コンサルタントであり、『売ってはいけない』の著者でもある永井孝尚氏によると、「機会損失を怖れ商品を潤沢にそろえることだけ考えているから、自ら価値を下げている。ゲーム理論を学び、『あえて少なく売る戦略』も検討すべきだ」という。そこでフェラーリの価値づくりをひもときながら、付加価値の本質について語ってもらった。(本記事は、同書の一部を再編集したものです)

その行動、商品の価値を下げてます

ユミさんはかわいいアクセサリーを手作りし、ネット販売している。ユミさんが作るアクセサリーには、根強い人気があった。でも彼女のアクセサリーは、決して品切れしない。

ユミさんいわく「『欲しい』というお客さんを悲しませたくないので、『これくらい売れる』という数よりも、2~3割多く作っています」。品切れさせないために徹夜もいとわないという。だから必ず売れ残りが出る。

そこでユミさんは定期的に「感謝セール」を行い、半額で売っている。しかし最近、「これくらい売れる」と思った数が売れなくなってきたという。感謝セールを待って、半額で買おうとするお客が増えてきたためだ。

多くの日本メーカーが行っていることは、ユミさんが行っていることと同じだ。商品が売れ始めると多少無理をしてでも生産量を増やすが、供給過多になり売れ残る。そして在庫一掃セールにより自ら価値を下げ、価格も下がってしまう。

「機会損失」という言葉がある。本来売れるのに商品がないため売れない状態のことだ。ユミさんも多くの日本メーカーも、この機会損失を怖れて多めに作っているのだ。しかし、そのために自ら商品の価値を下げ、結果として価格も下げている。

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