アメリカ下着業界の女王「ヴィクシー」の凋落 いつの間にか時代遅れ感がハンパない
調査を請け負ったのはデービス・ポーク&ウォードウェルという大手法律事務所で、Lブランズとは浅からぬ関係にある。ウェクスナーの妻でLブランズの取締役を務めるアビゲイルはこの事務所にアソシエイトとして働いたことがあるし、ウェクスナーの金融顧問はこの事務所の元パートナーだ。
ウェクスナーは1982年にヴィクトリアズ・シークレットを100万ドルで買収。世界的なブランドに育て上げるとともに、多くのアメリカ人にとっての「女性のセクシーさ」についてのイメージを作り上げた。
Lブランズの株価は2015年11月に約100ドルの最高値を記録した。その後、ヴィクトリアズ・シークレットの株価は80%以上下落した。
「時代に合わせて進化できていない」
ヴィクトリアズ・シークレットは以前から、顧客である女性たちや現代的な美の理想との乖離を指摘されてきた。モデルたちがあまりに非現実的で、着こなしも女性より男性の目を意識しているとの批判を受けていたのだ。
3月、「もの言う投資家」として知られるバリントン・キャピタル・グループは、ヴィクトリアズ・シークレットが「時代に合わせて進化できていない」とする書簡をウェクスナーに送った 。
また、バリントンはLブランズの取締役が本社のあるコロンバスの地域社会、もしくはオハイオ州立大学を通じてウェクスナー夫妻と強いコネをもつ人ばかりだと指摘、取締役会の独立性に疑問を呈した(注:ウェクスナーは同大学の出身で、夫人は理事を務めている )。夫妻は個人としては同大学の最大の支援者だ。
4月、バリントンを特別顧問として迎えることでLブランズはバリントンと合意。かつて12人中3人にすぎなかった女性取締役の数は5人に増えた。
モデルのカーリー・クロスは先ごろ、ヴィクトリアズ・シークレットの仕事をやめた理由について同社が「美しいとはどういうことかについて、世界中の若い女性たちに伝えたいと思えるようなメッセージ」を送っていないからだと明らかにした。
「美しく、生活を謳歌している印象のスーパーモデルたちが憧れの的になった時代があった」と語るのは、ヴィクトリアズ・シークレットの重役を10年以上務めたレスリー・キングだ。
「だがミレニアル世代が台頭すると、それは時代遅れになり始めた。女性はどんな見た目をするべきか、どう感じるべきかについて誰かからとやかく言ってもらうのをやめたし、非現実的な美の投影は時代遅れでクールでないばかりか忌むべきものになった」