実に楽しい、お得に「寄り道」する旅のススメ JR西「関西1デイパス」は広範囲な周遊が可能

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私が利用したときは、近鉄に吉野山が設定されていた。1度吉野山の紅葉を見たいと思っていたので好都合であった。吉野駅に到着し、現存する日本最古のロープウェイで錦繍(きんしゅう)にきらめく山々に向かって上昇したときの高揚感は忘れられない。

近江鉄道・米原駅(筆者撮影)

このときはパスを最大限使い倒そうと、吉野山を観光した後に奈良に出て、関西本線、草津線を経て貴生川に向かい、近江鉄道に乗車した。途中、大正5年に建てられたレトロな日野駅(現在はその雰囲気を継承し改修された)を見学したのち、米原に出て北陸本線にて関西1デイパス限界の敦賀で宿泊した。

目的地は徳島なのであってまったく明後日(あさって)の方向なのだが、試合に間に合えばよい。敦賀に泊まることによって、翌朝は京都に向かう湖西線の車窓から、静かに広がる琵琶湖を心ゆくまで眺めることができた。徳島へは京都から高速バスに乗ったのだった。明石海峡大橋があるので、関西と徳島は近い。

急勾配と急カーブを楽しむ

今秋は、南海で高野山の設定がある。この路線はおすすめだ。何しろ、高野下駅から終着の極楽橋駅まで、50パーミル(1000m進むと50m登る)の急勾配と、曲線半径100mの急カーブを楽しめる山岳鉄道なのだ。何度か乗車したが、途中駅で列車交換待ちの停車をしたとき、自分の体が後方に持っていかれるかの重力を感じたほどだ。思わず高校物理の基礎、三角形の斜面に置かれた物体の図と「ma=mgsinθ」の運動方程式が頭に浮かんだ。

南海電鉄ではその名も「天空」という展望列車を走らせている。もちろん予約と座席指定料金により関西1デイパスで乗車可能だ。

極楽橋から高野山へのケーブルカーも楽しい。高低差328m(東京タワーとほぼ同じ)を約5分で登ってしまう。巻上機による、つるべ式と呼ばれる井戸のような仕組みも興味深い。

紅葉の高野山一帯を見学したら、金剛峯寺の新別殿で休憩をして帰ろう。関西1デイパスには拝観料の割引があるし、お茶とお菓子のお接待がある。高野山のゆるキャラ「こうやくん」もかわいらしい。

もちろん比叡山や飛鳥も紅葉の名所である。そのときの気分で行きたい観光エリアを選ぶとよいと思う。

もう1つ、寄り道の方法として「一筆書ききっぷ」が有効だ。以前の記事にも書いたが、距離が長くなるにつれキロ当たりの料金が安価になることに着目して、なるべく長い片道切符を仕立てるものだ。
途中下車という自由度があるし、目的地を単に往復するより変化に富んで楽しい。

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