消費増税された庶民が知らない法人税の不合理 大企業ほど税金を払わなくてすむカラクリ

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アメリカではタックス・シェルター・ビジネスが発達しており、投資銀行、会計事務所、弁護士事務所などが、オーダーメイドのスキームを考案していると聞きます。なかでも最もアグレッシブなタックス・シェルター(タックス・プランニング)のスキームを大々的に販売しているのは、会計事務所だと見られています。

1200億円を勝ち取った日本IBM

また、グローバル企業にも税務会計のエキスパートがいます。こうしたプロがひねり出すスキームだけに、不適正と認められるケースは、そうそうありません。日本では、東京国税局から約3995億円の申告漏れを指摘された日本IBMの持ち株会社が、約1200億円の追徴課税の取り消しを求めて訴訟を起こし、国が敗れたことがあります。

このスキームでは、日本IBMの持ち株会社が、アメリカのIBMから購入した、子会社である日本IBM(事業会社)の株を、2002年から2005年にかけて日本IBMへ売却(つまり日本IBMが自社株を購入)した際、約3995億円の損失を計上。この持ち株会社は、子会社の日本IBMと連結納税していたため、日本IBMの黒字が持ち株会社の赤字と相殺され、グループ全体の法人税負担を大きく減らしたのです。

これに対して東京国税局は、こうした取引には経済合理性がないとして約1200億円を追徴課税しましたが、1審、2審とも言い分が認められず、2016年に最高裁が上告を退けたため、IBM側が勝訴しました。なお、IBMの採用したスキームは2010年度税制改正で、禁止されました。

本来、納付されるべき税額と、実際に納付されている額との差である、税制ギャップが生じているのは、日本だけの問題ではありません。その背景には、デジタル化が進み、グローバルな規模で展開される新しいビジネスに対して、世界各国の税務当局が対応できていないという大きな問題が横たわっています。

例を挙げましょう。税の世界では、「恒久的施設(PE=Permanent Establishment)なければ課税なし」という国際的なルールがあります。

この「PE」とは、事業を継続的に営むため必要な支店や工場といった設備のことですが、外国法人などが日本で事業を行っても、日本国内にPE(恒久的施設)がない場合は、その外国法人の事業所得は、日本で課税されることはありません。

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