消費増税された庶民が知らない法人税の不合理 大企業ほど税金を払わなくてすむカラクリ

拡大
縮小

加えて現行の法人税制では、税制の簡素化を理由にして、期間損益計算が変則的に弾力化されていたり、減価償却資産の資産計上基準が緩和されていたりしています。これらも課税ベース縮小化につながっているのです。

こうしたタックス・イロージョン現象は、複雑な税務会計システムのメカニズムの中に埋没してしまい、公表される財務報告書から、その企業が駆使している会計テクニックを把握することは、ほぼ不可能です。税務統計上でも明らかになることはありません。

課税ベースを縮小させる手法を利用できる大企業や特定業種の企業と、そうではない企業との間に不公平が生じており、極めて重大な問題だと申し上げていいでしょう。

ソフトバンクで発覚した4200億円の申告漏れ

ベールに包まれたタックス・イロージョンの一端が明らかになったのが、2019年6月に発覚したソフトバンクグループ株式会社の、過去最高額といわれる4200億円の申告漏れです。

報道によると、子会社の株を関連ファンドへ現物出資した際、取得価格と時価評価の差額、約1兆4000億円の損失を計上しましたが、国税局は70%しか計上を認めず、残りの約4200億円について申告漏れを指摘したとのことです。

この件について同社は、こうコメントしています。

「損金算入の時期で見解の相違があり修正申告した。約4000億円は2019年3月期の損金に算入される。所得隠しのような脱税に関わるものではない」(朝日新聞電子版2019年6月19日付)

とはいえ各メディアでも指摘されているように、こうした処理を繰り返して税法上の損金を生じさせてしまえば、継続して税負担を軽減できることになります。

ソフトバンクグループは非常にアグレッシブ(積極的)なタックス・プランニング(税務戦略)を構築している企業なのでしょう。同社の2013年3月期から2018年3月期までの有価証券報告書をみると、2017年3月期(税引前利益:2兆8181億7600万円、法人税等278億8200万円)を除けば、税引前利益は約7778億円から約63億円まで大きく幅がありますが、納付した法人税等は4期とも500万円と同じでした。

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