水の中で動く「ドローン」が潜かにキテる理由 水中調査にドローンを活用する機運が高まる

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実際、GLADIUSは日本において海上保安庁で船底の点検や、養殖用のいけすの点検に導入された。GLADIUSの国内代理店スペースワンは、ダムの点検や配管内部の点検に売り込みをかけているほか、洞窟内の調査の実験も行うなど、用途拡大に余念がない。こうした安価で手軽な手段が登場したことで、これまでなかった水中ドローンの需要が掘り起こされてきている。

だが、コンシューマー向け水中ドローンでは安定性や潜れる深さ、動きの制約が大きく、本格的な商業利用のハードルはまだまだ高い。

現在、コンシューマー向け水中ドローンが潜れるのは水深数十メートル以内で、横の動きにも対応していないモデルが大半。本格的な水中調査ニーズに対応するためには、より深く潜れる水中ドローンが必要だ。もともと水中ロボットの業界では、小型の探査機で深く潜るのは難しいとされてきた。操作のためのケーブルが長くなると軽い機体では流されてしまうからだ。

産業用水中ドローンに勝機

2014年に設立したFullDepth(東京都台東区)は、十分な強度と流されにくい細さを両立したケーブルを採用することで水深300メートルまで潜行可能なモデルを開発した。今年4月にVCなどから3.4億円の資金調達をし、年内に量産体制を整える。現状はレンタルのみだが、販売にも乗り出す。

FullDepthの産業用水中ドローンの重さは28kgで、人の手で運用が可能だ(写真:FullDepth)

さらに水深1000メートルまで潜れるモデルも開発中。FullDepthの伊藤昌平社長は「コンシューマー向けドローンとROVの中間、 産業用の水中ドローンの市場を作っていきたい」と語る。ほかにもアメリカのBlue Roboticsがすでにコンシューマー向けよりも大型の製品を投入しており、産業用向け水中ドローンの競争も激しくなっている。

水中は空に比べて環境が厳しい。バッテリーに水が触れないようにしつつ、長時間作業のためには簡単に交換できるようにしなければならない。バッテリーのムダ使いを避けるために、水の中で浮かないが沈まない絶妙な重さに調整することも必要だ。こうした難しさがあるからこそ、産業向け技術で先行すれば日本メーカーにも勝機はある。

中野 大樹 東洋経済 記者

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なかの たいじゅ / Taiju Nakano

大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。

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