なぜ西武と阪神は「プロ野球」にこだわるのか

かつて参入した鉄道会社は経営から次々撤退

このように、鉄道会社は戦後次々とプロ野球へ参入し、昭和から平成にかけて次々と撤退したことがわかる。大手私鉄は鉄道の利用促進による運輸収入増と、住宅や商業施設、娯楽施設などの設置による沿線開発を通じた関連事業収入増との相乗効果を狙い、本業の鉄道事業と関連事業をともに拡大させた。

大手私鉄のプロ野球参入は、本拠地球場を沿線に構えることで鉄道の利用を促進する沿線開発としての側面のほか(ただし、西鉄など一部の球団は沿線から離れた場所に本拠地を構え、鉄道利用促進効果は限定的だった)、知名度向上による定住促進やイメージ向上を狙う広告戦略としての側面があった。

インターネットが発達するまで、人々への情報提供の主役がテレビや新聞であった時代において、プロ野球のオーナー会社にとって、マスメディアを通じた広告効果は大きな意味をもっていた。

赤字解消優先の経営判断

昭和から平成にかけて、パ・リーグ球団を保有していた大手私鉄3社(阪急、南海、近鉄)が球団を次々と手放した背景には、知名度向上や鉄道の利用促進の効果よりも、売却によって球団が抱える赤字の解消を優先する経営判断があったことが考えられる。

阪急、南海、近鉄の各球団の年間観客動員は伸び悩み、入場料収入も厳しい数字であったことは想像に難くない。鉄道系球団の場合、入場者数の増減は鉄道利用者数にほぼ直結するが、入場者数が少ないと鉄道への貢献も限定的になってしまった面は否めない。

また、1993年のフリーエージェント(FA)制導入などにより選手年俸は上昇傾向にあり、観客動員の伸び悩みに苦しむ球団にとってはそうした負担が重荷となったことも否定できない。

2019年、埼玉西武ライオンズはパ・リーグ2連覇を果たした(筆者撮影)

一方、西武ライオンズは幾度の売却危機を乗り越えた。観客動員が増加傾向にあることや、本拠地最寄りの西武球場前駅が都心から離れていて運賃収入が見込めたこと、枝線の終点駅のため定期券を所持している利用者からも確実に乗り越し運賃収入が入ることなどが幸いしたと考えられる。

そして、沿線価値向上や海外事業展開、地域との共生を目指す西武グループの中で、ライオンズはイメージリーダーとして位置づけられている。2008年からは埼玉県の球団となることを目指して、球団名を埼玉西武ライオンズに改称した。

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