「千葉のイチゴ農家」を襲った台風の厳しい現実

「今年のクリスマスに間に合わない」悲痛な叫び

修理をしたくてもままならない現状。さらに深刻なのはビニールハウスの中で育てられていたイチゴの苗の被害だ。

傷んでしまい廃棄されたイチゴの苗(筆者撮影)

「1次被害として、ハウスのビニールが飛んでしまい、巻き上げられた海水をかぶったイチゴの苗が塩害でやられてしまいました。2次被害として、雨風にさらされて傷がついて、病気になったり枯れてしまった苗がつぎつぎと出てきている状況です」

猪野さんによれば、イチゴの苗はとても繊細だという。

「みなさんは、あまりご存じではないかもですがイチゴはバラ科の植物です。バラはとてもデリケートで、湿度や水分量をコントロールして育てるのが難しい。イチゴも結構デリケートで、1日水をあげなくても、逆にあげすぎてもすぐ調子を崩します。普段はハウスの中にいるイチゴが、ハウスがない開けっぴろげな場所で風に吹かれたり雨に打たれたりしたことで傷がついて、そこから病気になってしまっています」

毎日のように苗の様子を見て、傷ついたものを消毒する。しかし、日に日に状況は悪くなっていっているという。

「3万本ある苗のうち、5000本が現状でやられてしまいました。今後もっと多くの苗がダメになってしまうと思います。苗から苗へ感染する病気が発生する恐れもありますし。毎日苗を捨てているのが現状です」

このままではクリスマスに間に合わない

そして、猪野さんを焦らせていることがもう1つある。それはイチゴの苗を畑の畝に植え付ける作業を早くしなければならないということだ。

残された苗とともに話す猪野さん(筆者撮影)

「今(注:取材日は9月23日)が本来なら植え付けの追い込みの時期ではあります。本来9月の頭から始めて、今頃には終わってなければいけないのですが、すでに1カ月ほど遅れています」

ちょうど植え付け作業を始める時期に、直撃した台風。おかげで植え付けが大幅に遅れ、いつ始められるか見当もつかない状況になっている。それが「大きなダメージ」をイチゴ農家に与えるのだという。

「ハウスで生産されたイチゴを皆さんが口にする時期はクリスマス前くらいから、終わりはだいたい5月の末までだと思います。冬といえばクリスマスがあって、クリスマスケーキの上にはイチゴがのっているというイメージがとても強いものですから、イチゴが連想されるのはやっぱり冬場。1年でいちばんイチゴが売れるのは、なんといっても12月です」

倒壊した猪野さんのビニールハウス(筆者撮影)

植え付けが始められないと、12月にイチゴの生産が間に合わなくなるかもしれない。

「被害を受けた農家の中には、1月中頃にならないとイチゴが出荷できないところも多いでしょう。そうなると12月の最もイチゴが売れる時期を逃してしまうことになってしまう。そうすると収入もかなり減ることになりますね」

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