「千葉のイチゴ農家」を襲った台風の厳しい現実 「今年のクリスマスに間に合わない」悲痛な叫び

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猪野さんによると、被害を受けたビニールハウスを修理するには、1棟当たり100万単位のお金が必要になるという。それに加えて、日々進行する苗の損害。さらには、クリスマス時期の商機を逃すことによる収入の大幅減などが重なり、一刻も早く手を打たないと千葉のイチゴ農家は致命的な打撃を受けてしまいかねないという。

ついに廃業を決めた生産者も出始めた。

「高齢の方から、笑って『農業を辞める。あとは若い者に任せる』と苗を譲られました。頑張ってきた姿をずっと見てきましたから、辞める決断をしなければならなかった気持ちを思うと、本当に切なかったです」

千葉県内のイチゴ農家も高齢化が進んでいるという。猪野さんのように跡を継ぐ人も少なく、近年の自然災害の増加は、廃業を決断させるのに十分すぎる理由となっている。

たくさんのイチゴが実っていた猪野さんのビニールハウス(2018年猪野さん撮影)

「ハウスがダメになって、補修にかかった費用をこれから先取り戻せるかという話になったとき、自分が生きている間には取り戻せないっていう方がいらっしゃるということ。

息子さんに『自分がここで頑張ったところで、この先何が起きるかわからない。自分の体にも、自然災害にしても。これを機に辞めてしまったほうがいいのではないか』と話したという方もいる」

こうした中、猪野さんたち若い生産者やその周囲の人が、「なんとか現状を知ってもらいたい。そして、現状を打開していきたい」と動き始めている。東金市出身で、東京で会社員をしている平林磨衣さんは、小中学校の同級生である猪野さんの窮状を救うべく、クラウドファンディングを開始した。

そして、「千葉県のイチゴ農家を救えないか」と猪野さんや平林さんたちが支援を求める活動を開始した。高齢化が進む千葉のイチゴ農家たちを、若い世代が助けるべく動き始めたのだ。

台風の被害は想像以上に深刻だ

「今年のクリスマスにはぜひ、千葉県産のイチゴのクリスマスケーキを食べてほしいです。そして、千葉県民と、千葉の農家が受けた被害のことをぜひ思い出してほしいです。被害が深刻なのはイチゴ農家だけではありません。僕が知るだけでもブドウ農家さんも、花をハウスで育てている農家さんも同様に深刻な被害を受けています。そうした人たちのこともぜひ忘れないでほしいのです」

千葉県産のイチゴのクリスマスケーキを食べてほしいと話した猪野さん(筆者撮影)

千葉県が9月26日に発表した資料によれば、台風15号の影響による農林水産業への被害額は、農業施設などが約238.7億円、農作物などが約99.5億円などに達した。

畜産・林業・水産を含めた合計368億円の被害は東日本大震災の被害額(約346億円)を超えている。

千葉県では復旧に向けた支援を行うと同時に国への支援措置も要望している。

猪野さんのようなイチゴ農家だけでなく、県内全域で大きな被害をもたらした今回の台風。行政側の支援だけでなく、民間企業や私たち1人ひとりの支援も重要だ。

鎮目 博道 テレビプロデューサー、顔ハメパネル愛好家、江戸川大学非常勤講師

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しずめ ひろみち / Hiromichi Shizume

1992年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなど海外取材を多く手がける。またAbemaTVの立ち上げに参画。「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、多メディアで活動。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルのメディアとしての可能性をライフワークとして研究する。近著に『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社・2月22日発売)

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