総務省と携帯業界、激しく対立する「4つの理由」 ソフトバンクが「後出し規制」に強い不満

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まず、政治的な背景だ。総務相の経験もある菅義偉官房長官は、通信業界へ高い関心を持っている。2018年8月に菅氏が「携帯電話の料金は今より4割程度下げられる」と発言したことをきっかけに、携帯料金を下げさせるためのルール改正が大きく動き出した。安倍政権の実力者である菅氏がこうした考えを持つ以上、総務省としては顧客の囲い込みにつながるような売り方を認めるわけにはいかないはずだ。

電波の公共性もある。携帯電話事業向け電波の利用権をオークションにしているアメリカなどと違い、日本では事業者に電波利用の金銭的な対価を求めてこなかった。アメリカで2015年に行われた1.7/2.1ギガヘルツ帯のオークションの落札総額は約5兆円にものぼるなど、その価値は巨額だが、総務省は各社が提出する事業計画への評価だけで電波を割り当ててきた。

ただし、その代わりに電波を取得した事業者は、国民の財産である電波を適切に有効に使う責任がある。事業者は、総務省に提出した計画通り、採算の厳しい地方でもしっかりとネットワーク整備を行う必要があるなど別の負担がかかる。こうした高い公共性は、ほかの多くの業界とは異なる。

なお、改正電波法により、今秋以降の5Gの2次割り当てからは、審査の一項目として利用権への入札に近い仕組みが導入される。

インフラなのに、複雑でわかりにくい料金プラン

携帯電話が子どもからお年寄りまで、文字通り老若男女が使うインフラとなっているという事情もある。それにもかかわらず、通信契約や端末を購入する料金プランは複雑で、一般消費者が自分に合う適切な選択をするのは容易ではない。

しかも、携帯電話の世界は技術革新のスピードが極めて速い。総務省で携帯料金政策に関わる関係者は「料金プランも端末も、すぐに今とはまったく違う新しいものも出てくるはずだが、囲い込みがあれば合理的な選択ができない」とし、一定の規制は必要だと語る。

また、総務省側はこれまでキャリア側の良識に期待していたが、それが裏切られたことも挙げられる。改正法が議論されていた最中から、有識者会議のある委員は「通信業界を金融業界のように厳格なルールで縛ることはしたくない。自浄作用に期待したい」と語っていた。あらかじめ過度に厳しいルールをつくることは、事業の柔軟性を失わせるからだ。

総務省とキャリアの認識の差が埋まらない限りは、今後も同じようなイタチごっこが続きそうだ。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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