婚約はしていたものの相談所はまだ退会をしていなかったので、担当者に事の成り行きを話し、再び婚活を再開した。
その後、お見合いして交際に入ってもなかなかうまくいかなかったが、1年後に、真剣交際に入る女性が現れた。佐藤智代(仮名、38歳)で、医師だった。
「化粧気のない地味な人で、僕と同じで恋愛経験がない様子でした。『女医だと言うと、男性が引いてしまう』と言っていましたが、僕は逆に彼女の仕事に興味があったし、お見合いのときから話がすごく合ったんです」
というのも祐一は医療機器メーカーに勤めていて、仕事で病院関係者と接することが多かったのだ。
「お付き合いに入ってからは、彼女のほうが積極的でした。『週末は、必ず会いたい』と言うので、電車で2時間くらいかかる彼女が住んでいた街に、僕が出向いていました。そんな中で、結婚の話も自然と出るようになりました」
ウチの家庭環境が破談の原因に
2人の間では結婚への気持ちが固まり、智代の両親にあいさつに行く段取りを決めた。すると、またも彼女の両親がこの結婚に反対し出した。
「ウチの家庭環境が気に入らなかったようです。僕が高校生のときに母が浮気をして不倫相手のところに行ってしまった。その後、離婚になったのですが、父は僕を放り出したので、母方の祖母の家で暮らすことになりました」
祖母は年金暮らし。金銭の余裕はなかったが、大学に進学したかった祐一は国立大学を受験。合格すると奨学金をもらい、アルバイトをしてギリギリの生活をしながら、大学院まで卒業をした。
「家に財産があるわけではない。卒業後も、奨学金を返さないといけなかったので、僕には貯金がほとんどなかった。そのいきさつを知った智代さんのご両親から、『智代と結婚するなら、親御さんとは親子の縁を切ってくれ』と言われました。
母親は、男を作って家を出ていく。父親は、息子の面倒を見ないでほったらかし。そんな人たちと親戚関係になったら、いつか借金の申し入れがあったり、金銭的な負担を強いられたりするんじゃないかと思ったようです」
どんなに冷たい仕打ちをされようが、親は親。祐一は、親子の縁を切ることに抵抗があったが、智代のことが好きだったし、結婚を選ぶならそれも仕方ないのかと、腹をくくった。そして、親子の縁を切ることを両親に告げた。
「そうこうしているうちに、彼女の態度がおかしくなっていったんです。ご両親に何か吹き込まれたのか、『あなたとは、結婚できない』と言い出した。こっちは『親子の縁を切る』という決意までしたのに、今さらそれはないだろうと、愕然としました」
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