最初の婚約相手は、相談所に入って3カ月目に知り合った女性。祐一よりも2つ年上の小堀美咲(仮名、37歳)で、公務員として働いていた。
「恥ずかしい話ですが、それまで1度も女性と付き合ったことがなかった。30歳を超えて“結婚したい”と思っても、出会いがない。女性に声のかけ方もわからない。そこで、結婚相談所に入ったんです。そうしたら3カ月目に美咲さんに出会って、3カ月お付き合いをしたら結婚話が出て、プロポーズしたら受けてもらえた。なんだ、結婚するって意外と簡単なことなんだと、最初は高をくくっていました」
しかし、婚約した後から、雲行きが怪しくなった。
「彼女の家に遊びに行ったら、ものすごく立派な仏壇があったんです。“新興宗教の信者なんだな”と、ピンときました。彼女に聞いたら、そうだという。でも、彼女は、“親が熱心だったから、私も何の抵抗もなく信者になったけれど、結婚する相手にその宗教は強要しない”と言うんですね」
信教は自由。祐一自身に信仰している宗教はなかったが、彼女がその新興宗教を信仰したいなら、それはそれでいいと思っていた。
ところが、彼女の親御さんに会いに行くことが決まると、彼女が困惑した表情で言った。
「父が、宗教に入信しないと、結婚を許さないって」
その発言に祐一は戸惑った。しかし、それまで恋愛をしたことがなかった祐一が、初めて好きになった女性だ。
「僕は結婚したい気持ちが強かったので、『ならば、入信してもいいかな』と思ったんです。だけど、だんだんと彼女の様子が変わっていった。会っていても態度が急によそよそしくなって」
祐一は、このままいったら2人の関係が壊れていくのではないかという危機感を持った。
「そこで、2泊3日の温泉旅行を提案しました。旅行をしながら時間をかけて、彼女の中に生まれた結婚への迷いや疑問を聞き出し、それを払拭できたらいいと思ったんです」
「汚物の臭いが生理的に受け付けない」
ところが旅行当日、祐一は朝から体調がすぐれなかった。ただ、この旅行で何としても関係を修復したいと思っていたので、行くことを強行した。電車を乗り継ぎ、最後はバスで宿へと向かった。
「そうしたら車酔いしちゃったのか、宿の部屋に入るなり吐いちゃったんです。彼女にものすごく嫌な顔をされました」
仲を深めようと思った旅行は台無し。帰ってきた翌日に、「結婚は、白紙に戻してほしい」という連絡がきた。
「僕の吐いた汚物の臭いが、ダメだったって。『あなたとは、生理的に合わない』と言われました。そもそも僕のことは、『男として好きになれなかった。でも、長い間一緒にいれば、好きになれるんじゃないかと思った』と。
そんなときに、ご両親に反対されて、気持ちが揺らいだ。そして、旅行で汚物の臭いを嗅いで、決定的にダメだと思ったと。『生理的に合わない』と言われると、これは修復の余地がないですよね。諦めました」
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