猫が人の言葉を理解しているという確かな根拠 縄張りという視点で人をよく観察している

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言葉の理解は、経験が肝要になってくるので、飼い主は猫にポジティブな言葉をかけるときと、ネガティブな言葉を伝えるときでは、声の大きさや高低、抑揚をはっきり変えて話しかけたほうがいいですね。例えば、猫を褒めるときは、高い声でやさしく、語尾を上げながら。反対に、危険なことを諭したりする場合は、低い声で大きく語尾を下げて。

名前を呼ぶときは、ポジティブな状況のみに

そして猫が自分の名前をわかっていると仮定すると、猫にとってマイナスな状況で名前を呼んで話しかけると、嫌な記憶として覚えてしまうので、猫の名前を呼ぶときは、ポジティブな状況のみにしたほうが身のためですね。

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このような事柄からわかるのは、猫は人の発する言葉を、そのときの状況や人の様子から全体像としてどんなものか察知はできるということです。

ですが人の言葉はある程度理解していても、猫脳の構造からすると、残念ながら猫は人と会話することはできません。そりゃ当然? 「いや、うちはできる」との反論が、猫の飼い主さんから聴こえてきそうですが……。

猫は人の言葉や感情は理解してくれているわけだから、それでよしとするのはどうでしょうか。猫サイドの言い分からしたら単なる縄張りチェックだとしても、側にいてじっと観察してくれている、人が言わんとしていることを理解しようとしてくれている、そう捉えることが猫と幸せに暮らす秘訣かもしれません。

今泉 忠明 監修、哺乳動物学者、「ねこの博物館」館長

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いまいずみ ただあき / Tadaaki Imaizumi

1944年、東京生まれ。東京水産大学(現・東京海洋大学)卒。国立科学博物館特別研究生として哺乳類の生態調査に参加し、以来、主に野生動物の生態調査・研究に携わる。専門は生態学、分類学。日本動物科学研究所所長、子どもたちと自然を楽しむ「けもの塾」塾長。『地球 絶滅動物記』(竹書房)、『進化を忘れた動物たち』(講談社)、『野生ネコの百科』(データハウス)、『ざんねんないきもの事典』シリーズ(高橋書店)など著作、監修書籍多数。

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