「育休」働き方多様化時代に合わない問題点4選 現代の社会環境にマッチしない面がある

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例えば、年収が同じ600万円のAさんとBさんがいて、Aさんの会社では年俸制で600万円を12で割って月に50万円支給されるとしたら、Aさんの育児休業給付金の額は50万円をベースに決定されます。

一方でBさんの会社では、賞与の割合が大きく「月度賃金30万円/月+賞与240万円/年」だとしたら、賞与部分は考慮されず、30万円をベースに育児休業給付金の額が決定されてしまうのです。同様に、産前産後に健康保険から支給される出産一時金についても、賞与は除いた計算式で、各人の1日当たりの給付額が決まる仕組みになっています。

筆者の実務感覚としましても、昨今、給与体系は会社によって多様化している傾向にありますので、給与の支払われ方で育児休業給付金や出産手当金に不公平が生じない仕組みに見直すことも検討の余地があるのではないでしょうか。

国民健康保険には所得補償制度がない

第4の問題点は、社会保険(=健康保険+厚生年金)未加入者は、産前産後休業期間中に所得補償が行われないため、産後休業に入ってから育児休業給付金が受給できるまでの約3カ月、無収入に陥ってしまうということです。

男性社員の育児休業は子が誕生した直後から取得可能ですが、女性社員の育児休業は産後8週間の産後休業明けから取得開始になります。

一般的に、会社員の場合は社会保険に加入していますので、産前6週間・産後8週間の産前産後休業期間は、健康保険から、元の給与の約67%の出産手当金が所得補償として支払われます。育児休業開始後は、これが育児休業給付金に引き継がれますので、切れ目なく、国から所得補償が受けられるという形になります。

ところが、現在の法制度では、一定の条件を満たす小規模な個人事業主には、社会保険の加入義務が免除されています。そのような個人事業主の下で働いている人は国民年金と国民健康保険に加入する形になるのですが、国民健康保険には、健康保険の出産手当金に相当する所得補償制度が存在しません。そのため、産前産後休業期間の約3カ月、所得補償が受けられない状況に陥って経済的に困窮してしまいます。

加えて、社会保険には、産前産後休業期間および育児休業期間、社会保険料が本人負担分も事業主負担分も含め免除になるという制度が存在します。

この保険料免除制度は、従来、国民年金や国民健康保険ではまったく受けられませんでしたが、平成31(2019)年4月1日から、産前産後期間に関し、国民年金でもようやく開始されることとなりました。

しかし、育児休業期間は国民年金の保険料は免除にならず、また、国民健康保険には保険料免除制度はまったく導入されていません。社会保険に加入できず、国民健康保険に加入せざるをえない人は、産前産後休業期間中に所得補償が受けられないことと、保険料免除が受けられないことのダブルパンチに苦しんでいます。

さらに言えば、現在多様な働き方の中で増加している、フリーランスの方の産前産後期間や育児休業期間の経済的支援も積極的に検討していくべきです。働き方や、加入する保険制度によって発生する不平等も、解消していかなければならない重要な課題です。

育児・介護休業や産前産後休業は、これまでもさまざまな法改正は加えられていますが、やはり、「正社員」「終身雇用」を大前提として最初の制度設計が行われていますので、働き方が多様化した現代では、本稿で問題提起させていただいたよう、さまざまな矛盾や不平等が生じています。

制度を根本的に見直すことも含め、国民が安心・納得して利用できる制度に見直されていくことを期待したいところです。

榊 裕葵 社会保険労務士、CFP

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さかき ゆうき / Yuki Sakaki

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。会社員時代の経験も生かしながら、経営分析に強い社労士として顧問先の支援や執筆活動に従事している。

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